「クリスマス、かぁ・・・」
人々が行き交う、首都プロンテラにそびえる大きな、大きなクリスマスツリー。
毎年中央の噴水がほかの場所に移動され、代わりに大きなクリスマスツリーが飾られるようになったのはごく最近。
トリスタン三世が非常にクリスマスなる行事に興味を覚えたのがきっかけといわれている。
やはり国のトップなる者が興味を覚えるというのは非常に大きな影響を与える。
現に、このでっかいクリスマスツリーも首都全体の雰囲気も、それに呼応するかの様な姿へと変わっている。

ただ、この時期は私に取って嬉しい時期でもあり、苦悩の時期でもある。
はぁぁ・・・と大きなため息を吐きながら再度そのクリスマスツリーを見上げる。
此方の気等お構いなしな煌びやかな存在。
それが今では少し苛立ちすら思えてくる。

・・・あー、だめだだめだ、考えがマイナス方向に転がっている。

咄嗟に今考えていた事を振り払うかのように頭を数回左右に振る。
と、その時・・・

「ごめんごめん、待った?」

金色をした髪を携えた一人のシーフが、息を軽く切らしながらこちらに向かって走ってくる。
急いできたのであろう、服装も非常に乱れている。
「あ、ううん、今さっき来た所だから平気」
彼のその気遣いをありがたく思いながら、笑顔を向ける。
自分のそんな表情を見て、彼も言葉の代わりに笑って見せてくれた。




ラグナロク・ショートストーリー‐聖なる夜は・・・




シーフという職に関してはあまり良いうわさを聞いていなかった。
彼らはいずれ暗殺者であるアサシンか、またはならず者と呼ばれるローグという職になる。
その為、その過程であるシーフ時代もあまり良い話は聞かないのが普通だ。
しかし、彼は違った。
彼は率直に言うと優しく、そして素直な好感の持てる人だった。


昔、こんな事を聞いたことがある。
「シーフって、あまり良い人はいないって聞いていたけど貴方は変わってるのね」
そんな事を言った自分に対して、彼は一回くすっと笑みを浮かべる。
「まぁそうかもしれないけど・・・」
少し遠い目。
されど、寂しさや哀しさ等は含まない目。
「職上そう見られても仕方がないかもしれないけど、これだけは言えると思うんだ」
軽くジェスチャーを取り入れた話。
その話に、私は聞き入っていた。

「様はその人の考えの持ち様さ。悪い考えの持ち主が騎士になれば、当然その騎士は悪くなるよ」

そんなさも当然の様な話であったが、これは私の世界観を見事に壊すきっかけとなった。
私はこの目の前にいる一人のシーフの人を見ずに、シーフという職の噂だけを信じていた。
目の前を見ろ、こんなに優しいシーフがいるじゃないか。
狭い・・・私の考えは何て狭い視野しか持ってなかったのだろう。
「そうね・・・うん、変な事聞いてごめんなさい」
そう言って頭を伏せる自分をあせあせと対応するシーフ。
ああ、何で私はこの人を真っ向から見ようとしなかったんだろうか。
自分が小さく、そしてそのシーフがとても大きく見えた。
この時からだろうか。
自分の心の中で、彼が確実に地位を占めてきている事を。



そんなきっかけを元に、私は気づいた頃に彼に惹かれているのに気がついた。
元々大切な人ではあったが、それとはまた違う熱いこの感情。
それは日に日に大きさを増し、気が付いた頃には。

「わ、私と良ければ・・・お付き合いしてくれませんか?」

こんな事を口走ってしまっていた。
恥ずかしかった。
だがそれ以上に襲ってきたのはこの何ともいえぬ不安感と恐怖。
断られたらどうしよう・・・もうこれ以上いっしょに冒険とかしてくれなくなるのかな。
一緒いいれなくなるというこれ以上無い苦痛である。
そんな恐怖を想像しながら、俯きがちに彼の顔を覗き込む。
「あー、えっと、その・・・」
彼も言われて恥ずかしいらしく、顔を真っ赤にしながら明後日の方向を見ている。
やっぱ、迷惑かけちゃったかな・・・
「あ、ごめんね、いきなり・・・迷惑だったよね」
あはは、と照れ隠しに笑う。
そりゃぁいきなりいつも近くにいた私が告白なんかしたらそれは驚いて当然というもの。
困惑しているのが簡単にわかる。
そこからというもの、非常に重たい、気まずい雰囲気が流れていた。
「ぼ、ぼくでよければ・・・」
「え?」
沈黙という名の殻を破る一言。
彼の透き通った、落ち着いた一言。
「い、今なんて・・・?」
聞き間違えたかと一瞬思った。
その反面、聞き間違いだと思いたくない一言だった。
こほん、と軽く咳きをしながら。

「僕からも・・・良ければ、今後もいっしょに・・・ずっと、冒険しませんか」


何物にも勝るこの一言。
嬉しさのあまりに涙がこぼれて、彼の顔を直視する事が出来ない。
「うん・・・うん!」
涙を流しつつ、それでも嬉しかった私は笑顔で顔を何度も縦に振った。
今考えてみれば、それはさぞかし酷い顔だったかもしれない。
でも、そんな事を気にする必要すら感じなかったほどあの時の私は喜びに満ち溢れていた。
そんな。

「メリー・・・クリスマス」

そんな、すばらしいクリスマスの日だった。



それから早一年。
女の私としてはまさにビックイベントと呼べるであろうこの日がまた再来してきた。
去年はこの日に告白というまさに勝負を仕掛けて、私は見事に幸せを掴んだ。
今年はそれ以上に彼と・・・そう、この彼氏と幸せなクリスマスをおくりたい。


「あれからもう一年が経つんだね・・・」
あれからプロンテラの中央通りを歩いてるときの一言であった。
あの時を懐かしむかのように、目を細めながら。
「嬉しかったなぁ・・・あの日は。世界が一気に変わったような気分になった覚えがあるよ」
少しだけ顔を赤らめながら、ゆっくりと中央通りを歩いていく。

後々の話なのだが、彼もあの日に私に告白をしようなどと考えていたらしい。
たまたま私が早かった。
ただそれだけだったらしい。
この話がおかしく、言い終わってから私達は大声で一緒になって笑った。


「今更だけど、あれは滑稽だったなぁ・・・」
軽く昔のことを触りつつの会話だった為かその時の事を思い出したらしく、軽く話が振られてきた。
滑稽、か・・・
言われてみればそうかもしれないなと、私もつい軽く笑ってしまう。

両思いだったのだ。
壁を越えるきっかけがなかった。
そのきっかけを同じタイミングで私達は行おうとした。
つくづく変な話である。
時期が時期だけにもあったけど、相手が自分の事をどう思っているかまでは読み取れない。
それが生んだ、偶然の産物・・・。
そう、馬鹿らしい話かもしれないが、私にとっては非常に素敵な1コマのお話・・・。



そうこうしている内に、気が付けば自分の家の目の前にまで着いてしまっていた。
時間とは早いものだ。
時間は夕刻を過ぎ、そろそろ辺りの家からは灯が灯される時刻であった。
「どーうぞっ」
彼を家に招きいれ、入ったのを確認すると同時にドアをゆっくりと閉める。
部屋には、光を灯さなかった。

「み、見えないよー?」
彼の困惑した声が静寂な部屋に響き渡る。
そりゃそうだ、わざわざ暗くしてあるのだから見えたら雰囲気台無しというもの。
気づかれないように彼の横を通り、そして・・・

「メリークリスマース!!」

一斉にして蝋燭に火が灯され、部屋一面が明るくなる。
と同時に、テーブルにあらかじめ準備しておいたケーキ等が姿を現した。
「す、すごいな・・・」
呆気に取られて、一人玄関で立ち尽くす彼。
本当に驚いているらしく、玄関から歩を進め様とはしない。

そりゃそうだ、一日かけてゆっくりと・・・大切に、大切に作って準備したのだから。
そもそも、冒険の過程でここまで本格的に料理を作る機会など皆無に等しい。
それ故に。
一往私としての自信作達を見て驚かれるのは、嬉しい事であった。
・・・っと、ここで喜んでちゃだめなのよね。
味。
そう、彼の好みに合った味でないと意味がない。
私としては冒険中になるべく彼の好みを見つけて、それにあわせて作っては見たのだが・・・
どうなるかしらね・・・?
「とりあえず、ほら、席について〜」
立ち尽くす彼を、早く席に着くよう促した。


「おいしそうだなぁ・・・一人で作ったの?」
席に着いてから数分。
目の前にある食事を見渡しながら、感心とも取れる一言が彼の口から出ていた。
「まぁねー。こうやってしっかりとご飯を作る機会がないもんね、いつもは」

どうであろうと、私達冒険者は狩りなどをしてそのモンスター等が落としたアイテム等で生活を成り立たせる存在。
定住という単語は、引退等でもしないと中々ありえない話なのだ。
定住・・・それはつまり、一般の人たちと同じような生活を送るようなものなのだから。

否応なしに、冒険をしてしまえばそれに関する癖等は付いてしまう。
それのせいにと一重にするつもりはなかったが、やはり普通に生活するなんてありえなかった。
危険でも、狩りをして、敵と戦って生活をしていく。
それが、私達冒険者の普通の生活。

ただ・・・今日だけは。
特に今日だけは、一人の女性として生活がしたかった。
「さ、召し上がれ〜」
「いただきます」
律儀に手を合わせ、目の前にあった肉の炒め物を一口。
・・・ど、どうだろうか。
おいしいかな、まずいかな・・・
「そ、そんなに凝視されると食べずらいよ・・・」
少々笑いを堪えながらの一言に、はっと視線を逸らす。
しまった、ついついじぃっと見つめてしまってた・・・。
目の前にあった自分用のお肉をころころと軽く転がしつつ、彼の行動一つ一つを見つめる。

・・・あれ。
気が付けば、彼の体が非常にぼろぼろなのに気が付いた。
疲れた表情はみせていないものの、彼の体には痣などが色濃く見える。、
どうしたのかな・・・
そんな私の考えを遮るかのように。
「・・・美味い。おかわりもらってもいいかな?」
よほどお腹を空かしているのか、笑いながら皿を私に渡してくる。
これが非常に嬉しかった。
美味しいといってくれて、更におかわりまでしてくれるなんて。
頑張って作った甲斐があるというものだ。
「うん、ちょっとまっててねっ」
急いで立ち上がり、おかわりをよすろうと台所へと走っていく。
この時、私は彼の体にあった傷の事を忘れていた・・・。


「ふぅ・・・ご馳走様、本当においしかったよ」
また律儀に手をあわせて、小さくご馳走様とつぶやく。
あれから彼は非常に良く食べ、作りおきしていた物も全部食べてしまった。
そこまで食べてくれたのが嬉しかった。
よかった・・・味は丁度良かったようね。
「あぁ、そうだ・・・」
不意に立ち上がり、ゆっくりと椅子に腰掛ける自分へと近づいてくる。
「な、何?」
少々どぎまぎしつつ、返答を返す。
「ちょ・・っと、目を瞑ってくれないかな?」
にっこりと、ほんわかとした笑顔をこちらに向ける。
な、何だろうな・・・
何か判らない期待を胸に秘めながら、ゆっくりと視界が暗くなっていく。

「メリー・クリスマス」

頬に暖かい感触を感じながら、うっすらと目を開ける。
それと同時に、頭の上に感じる何か・・・なんだろう?
「取ってみな」
笑いながらそう言ってくる彼を見ながら、頭の上にのっかる何かを取り外す。
・・・え、これって。
天使の羽のような物が二つ左右についたヘアバンド。
私が昔ほしいなぁ・・・と呟いた事はあったけど・・・。

天使HBといい、非常に価値の高い高価なものである。
これを売れば普通の人なら数年は何もせずにすごす事が可能なほどであろう。

「ど、どうしたのこれっ!?」
私達はお金には困ってなかったが、天使HBを買うほどのお金など所持していなかったはず。
でも、今確かに私の手元には天使HBが存在している・・・。
あ・・・

「まさか、最近ずっと会えなかったのって・・・」

そう、ここ数日何やら彼は非常に忙しそうな雰囲気をしていた。
毎日朝早くには外に一人で出て、夜遅くにぼろぼろになって帰ってくる事が。
もしかして、今日のこの傷とかも・・・。

「いや、別に大した事はしてないよ」

はははっ、と小さく笑いながら目の前にあるコップに手を伸ばす。
その手もまた、ここ数日の厳しさを現すかのごとくぼろぼろであった。
私の為に、そんな・・・

「・・・ありがとう」

何物にも勝る事はないであろう、彼のそのひた向きな心遣いが嬉しかった。
無理をしたのは嫌だったけど、それ以上に嬉しさがこみ上げていた。
彼がいつも以上に、いとおしく思えた。

嗚呼神様、このままずっと、ずっと彼と一緒にいられますように・・・

もう一度その天使HBをゆっくりと頭につけて、涙が流れる目を擦りながら一言。

言わずにはいられなかった、今日という素晴らしい日の名称。

誰にだって辛い事はある。
それが対人関係であろうとも、自分のみの問題であろうとも。
そんな時思い出してほしい。

どこかで、貴方を大切に思ってくれている存在がいるという事を。
貴方を、必要としてくれている人がいるという事を。

忘れないでほしい。

貴方は一人じゃないことを。

今宵は貴方は一人ですか?
それとも、隣にいてくれる大切な人がいますか?
又は、沢山の友人と一緒に賑わいますか?

一人の人も。
二人の人も。
沢山で賑わう方も。



この日を、この時を楽しみませんか・・・?



今日という日が、貴方にとって素晴らしい日となりますように。



「メリー・・・クリスマス」



〜おわり〜




あとがき
こんばんわ、クリスマスイヴだってのに駄文をカタカタテキスト文章に打ち込む今日この頃いかがお過ごしでしょうか。
雰囲気台無しというかあとがきは別世界だぜうぇっへっへっへな鰤です(謎

さて、相変わらず日常的な面白みのない文ですみません(吐血
今回はあげくにくさいというおまけつきです、ぐっはー。

まぁとりあえず、本編を進めようかと思ったんですがクリスマスだしなーという事で
成り行きにまかせて文打ってたらこんな感じになってしまいました。
というかここまで管理人に喧嘩売ってる小説が完成するとは気分が(略

まぁRO世界ではどうやらこの日にRO彼女にプレゼントをあげる為に必死になる人が多いようです。
がぬばりますなぁ・・・そゆ人々は。
ここの管理人は多分普通にバイトいってそのまま帰ってきて青箱 あ け な い か で終わりでしょうね。
青箱タァン(*´Д`)

・・・話がそれました。
とまぁそゆわけで(どんなわけだ
クリスマス、枝でテロする人も彼女と過ごす方も箱開けて泣き崩れる人も(管理人)

良いクリスマスをっ!




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