ラグナロク・オリジナルストーリー第十話―王国



アリス「あー・・・つっかれたぁ!」
真っ赤に染まったお日様に向かって、窓から身を乗り出して大声で叫ぶ。
イング「あ、アリス・・・窓から叫ばない!」
アリスを何とか引張り戻し、注意を促す。
ここはプロンテアの宿屋。前にブリジット達と一緒にいた場所である。
バッタ海岸で狩りをしていた三人は日が落ちてくるのを確認し、ここにまた泊まる事にしたという訳だ。
そんな二人のやりとりを疲れた表情で見るユキ。
ユキ「あぁー・・・今日はやけに疲れたわ。ぐっすり眠れそう・・・。」
そして大きなため息を一つ。
すると、ふと何かを思い出したのか、イングが二人に向かって話し始める。
イング「そういえばさ・・・今日親切な盗賊さんに会ったんだ。こんな大変な世の中にもやっぱし良い人はいるんだね。」
その言葉に過敏に反応し、急に寝始めてしまうユキ。呆然とその光景を見るイング。
イング「な、何かあったの・・・?」
アリス「あぁ・・・実はね・・・。」
昼間の出来事を話す。その内容を聞き苦笑するイング。
すると、話が終わると同時にアリスの表情が急に変わる。
アリス「・・・あ!そういえば青ジェムが足りなくなってきてるの忘れてた!ちょっと買ってくるわね〜。」
そそくさとドアを出て行く。
イング「忙しいなぁ・・・さて、と。僕は剣の手入れをするか。」
剣に振り回されてるとはいえ手入れぐらいはね、と後から言葉に付け加えながら少し笑う。
心なしか、上機嫌そうであった。



アリス「よいしょ・・・っと、これくらいあれば平気でしょ。」
袋が結構膨れている。どうやらかなり買い込んだようだ。
アリス「でもサービスでロザリーくれるなんてあの商人さんも気が利くわね〜♪」
そして機嫌よさそうに、首にロザリーをかけてプロンテア中央の大通りを歩く。
時間帯がもう夜に近いせいか、食事等の買い物客が多い。客層も年が40を超えたような人達が多い。
さらに晩飯用だろう、出来上がった食品も数々ある為か良い匂いが辺り一面に漂っている。
その匂いに気が緩んでしまったか、お腹がくぅぅーとなる。少し赤面して笑う。
アリス「お腹もすいたし・・・早くかえろっと!」


宿屋の近くまでくるなり、目の前の何かにぶつかってしまう。
額を擦りながらよく見ると、風格のある顔つきのした、騎士がこちらを見下ろしていた。
アリス(・・・あ)
この姿は・・・そうだ、子供の頃に見た事がある。
確か・・・機工旅団のギルトの騎士?
他の冒険者の装備とは違う、特殊な外見が印象的だった覚えがあった。
騎士「・・・失礼。お怪我は?」
そういって手を差し伸べ、手を取るなり立ち上がらせてくれた。
アリス「あ、ありがとうございました。」
すかさずお辞儀をする。そして顔をあげ、何かお咎めがないかどうか少々びくびくしてしまう。
しかし、当の騎士はそんなそぶりも見せず、素っ気無く後ろに止めてあるペコペコの所まで戻っていく。
騎士「失礼、急いでいるのでこれにて失礼する」
そう言い残し、颯爽とペコペコを走らせていってしまった。
アリス「・・・よかったぁ」
心臓がばくばくと高鳴っている。



アリス「そいえば・・・さっき機工旅団の騎士さんに会ったの」
食事をしている時に、先程の出来事を少し話してみる事にした。
イング「機工旅団?・・・王国直属の?」
少々意外な名前に、スプーンを口に咥えながら声を出す。
ユキ「へぇ〜・・・運いいんじゃない?見る事すら難しい人達じゃないの」
そういって、目の前のパンをひと齧り。

そう、この世界の聖ミッドガルツ王国には王国直属のギルトが多数存在している。
先ほど出てきた、機工旅団もその一つ。
外見が普通の冒険者と違う彼等が一般人の目の前に出てくるのは、基本的にセレモニーなどの行事のみ。
一般には、影ながら民衆の為に毎日働いていると言われている。
ただ、一説には光に当てる事すら出来ぬような事も数多くこなしているとも言われているが、真偽は定かではない。

先ほど出てきた「機工旅団」もその一つで、主に国の技術うんぬんの向上に努めるギルトだったはず。
彼等は、一般的には表に出てくる事が少ない事で有名なのだ。
出てくるとすれば、画期的な物でも造った時のみだろう。

アリス「珍しいわよね〜・・・何かあったのかな?」
軽く首をかしげながら、コップをゆっくりと持ち上げる。
イング「う〜ん・・・多分、また何か凄いものでも出来たんじゃなのかな」
今の所その手の話は聞いてないけどね、あと後から苦笑しつつ付け加えた。
あれぇ?と声を上げる。
アリス「本当?ますますわからない・・・」
ユキ「・・・アリス、あなた夢でも見たんじゃない?・・・さっきぼーっとしてたし。」
そう言って少し笑う。イングもユキと同感らしく首を縦に振っている。
ひとまず食事が冷めるといけないので食べ始めた・・・が、どうもいまいち納得がいかない。
さらっと流してもいいような感じがするのに、これだけは何か自分の心をひきつけて離さない何かがあった。
細かく説明すると、何か変な感じがしたのだ・・・何となくだが。
アリス「・・・おっかしいなぁ。」
心の中で、そう小さく呟いた。



それは、突如私の耳に入り込んできた。
夜の外から聞こえた、鎧が動く度に鳴る、金属音が。
アリス「・・・もしかして」
そう思った時には、もう自分はその声が聞こえる方に走っていた。
我ながら、ここまで自分を動かしている原因がよくわからない。
アリス「・・・まぁいっか!」
そう自分を無理やり納得させて、足を急がした。


どれくらい走った頃だろうか?
いきなり走っている前方の方から声が聞こえ、今自分は忍び足でその声の方向に向かっている。
「・・・で、どうだ?」
アリス「・・・」
夜なので相手の姿までは確認できなかったが、しっかりと話し声がする所まで近づく事が出来た。
声の数は・・・
「全然だめだ、さっぱり」
「こちらも。厳しいな」
三つ?
はっきりと聞こえた声の数は三つ。
すべて声の主は男性のようだ。
アリス(何を話しているんだろう?)
盗み聞きしているので急かす訳にもいかず、じっと話の次を待つ。
「・・・やはり、普通にやってては限界なんじゃないか?」
一人が、低く、小さく、諭すかのように二人にそう言い放つ。
「だったら何だ?禁術にでも手を出すか?」
きんじゅ・・・つ?
初めて聞いたその単語を、一生懸命に頭の中の辞書と照らし合わせる。
「・・・だめだ。そんなことしたら、必ず"奴"が来る」
奴?
「あぁ、くそ、何なんだあいつは・・・あいつさえいなければもっと素晴らしい技術が手に入るってのに」
そう言って、小さく舌打ちをする。
この国がバックについているのに、それでも恐れなければいけないような対象がこの世界に存在する?
そんな、驚きと動揺が入り混じった声を小さく上げる。
「部下を他の街などに送らせてみたが、突如起きたフェイヨンの事件のせいで情報が入り乱れてよくわからんしな」
そして、またも一回だけ舌打ちの音。


その後も、出てくる言葉は今一確信に迫らない、曖昧な話がずっと続いていた。
他の街の状態がどうだとか、この首都の話うんぬんだとか。
やはり、内容をこうして聞いていると、国のお偉いさんだなぁとつくづく感じる。
「・・・こうなったら、いっそのこと奴を全面的に潰すように促すか?」
物騒な話だ。
ちょっと落ち着きのある人達だと思っていたので、即座にその言葉が頭に浮かんだ。
アリス(・・・意外、といっちゃ意外ね)
まぁ、そんなものか・・・
「そうだ、な。こちらの友人に今度当たってみる・・・あいつさえ消せば、すべてが上手くいくんだ・・・」
そこで一旦言葉が切られる。
アリス(うぅ、さむい)
そう言って、少し体を身震いさせる。
・・さすがにこれ以上いると、風邪を引きかねないな。
そう思い、もと来た道を戻ってる時だった。
「そう、奴・・・・・・を」
え?
今、聞きなれた単語が出てきたような・・・
確かに、そう聞こえた。
どう言う事?なんであの人が、彼等のような凄い存在に一目置かれているの?
もう一度そう言ったか確認すべく、再度息を潜めて近づいていく。


ガタン・・・
足元にあった、花瓶を盛大に蹴ってしまった。
アリス「しまっ・・・!」
思った時にはもう遅かった。
「誰だ!?」
夜に似合わない大きな声が、後ろからこちらに向けられて発せられる。
まずい!
咄嗟にあせあせと懐から青ジェムを取り出し、間一髪の所で呪文を唱える。
アリス「わ、わわわ、え?あ、ワープポータル!」
すぐ近くまで先ほどの人達が来た所で、すかさず呪文のところに飛び込んだ。
「貴様!」
殺意の混じった言葉が浴びせられたと同時に、自分の姿はそこから無くなっていた。


「あんな所にネズミがいたとはな・・・くそっ」
あきら様に怒りをあらわにしながら、地面を思いっきり蹴り上げる。
「落ち着け!・・・どうせ、普通の奴が聞いた所でわかるような話ではないし、まずい様な事もいっていない」
そう、自分に言い聞かせるように落ち着くよう促す。
「まぁいい、この話が聞かれた事は他の奴には言うな」
その言葉に他の二人が、ゆっくりと首を縦に振った。



つづく




〜あとがき〜
はぃ、レア運がなくともがぬばっております、ブリジットでございます!
ちょっとした国の側面を今回ちょこっと触れてみましたがいかがでしたか?
ちなみにこの話は、完全リメイクされた形です。昔の面影がほとんどありませんね!(吐血
修正です、修正(ぇ
次回にこうこうご期待です!それでは♪






SEO対策 ショッピングカート レンタルサーバー /テキスト広告 アクセス解析 無料ホームページ ライブチャット ブログ