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ラグナロク・オリジナルストーリー第11話―賞金
窓から差してくる眩しい光に目を覚ますイング。
イング「くぅー・・・良く寝たなぁ。」
腕を伸ばしながら周りを見る。
いつもと変わらない光景・・・でも、少々アリスが苦しんだような表情を浮かべながら寝ている。
イング(怖い夢でも見ているのかな)
心配で、近くまで歩いていくと、布団から放り出された手が汗でびしょびしょに濡れている。
ゆっくりとその手を持ち上げると、少しだが汚れがこびりついていた。
イング「・・・昨日、どこかいってたのかな?」
すると、突如手をぎゅっと力強く握られてしまう。
イング「わっ!」
離そうと奮闘するも、思った以上に力がこめられており、離す事が出来ない。
イング「・・・」
仕方が無いので、椅子を近くまで持ってきて、ずっとアリスの寝顔を見る羽目になった。
ユキ「・・・何やってんの?」
後から、ユキの呆れた言葉が浴びせられたのはいうまでもない。
ヤファ「ブリジットさん!もぅ朝ですよ!起きて下さい!」
思いっきり体を揺さぶりながら、あらんばかりの声を張り上げる。
しかし筋金入りの睡眠魔、ブリジットにはまったく通用しなかった。
ヤファ「こ、こうなったらぁ・・・」
するとヤファは、先程運ばれてきた紅茶を少量だけブリジットの口へ流し込む。
・・・数秒後。
急にブリジットがベットの上でのたうち回った後、体をがばっと起き上がらせる。
ブリジット「ぐ、ぐはっ!この味わ・・・や〜〜ふぁ〜〜〜?」
ヤファ「恐いです!ブリジットさんほんとに恐いです!」
その後、遅くなった朝食・・・というよりもほぼ昼飯に近い時間帯に食べ始める。
いつも通りなのだが・・・ヤファにはどうも珍しい物ばかりなのか、目を輝かながら食べている。
何やらどこかへ精神が飛んでいそうなヤファを見ながら話し掛ける。
ブリジット「そうだ、後で少し行きたい所があるんだけど・・・一緒にいくかい?」
ヤファ「は、はい!」
ヤファ「ま、眩しいぃぃ〜。」
手で光を遮りながらブリジットの横を歩くヤファ。
砂漠の街モロク・・・近くに盗賊・アサシンギルトが存在しており、無論この街にも盗賊、アサシンが多い。
しかも賞金首も多く集まる。高額な賞金が懸かった賞金首だってこの街ではよく見かける事が可能だ。
そして、その盗賊等に懸かっている賞金を生活資金とする賞金稼ぎ。
そんな連中を相手にする酒屋、宿屋などもその職から足を洗った人がやっているのが多いとか。
さらに近くにあるピラミッドダンジョン、スフィンクスダンジョン目的でくる冒険者、最後にそれらを相手にする商人。
この様な存在ばかりが集まる街がこのモロクである。
当然裏の情報が一番密集しており、賞金首の紙や噂などの出回りが首都よりも早く、情報収集に関して優秀な顔も持ち合わせている。
普通にしてればまず自分に危害は加えられない、でも治安が良い訳ではないと、不思議な所である。
ブリジット「ふぅ、ついたついた。ここに入るよ〜」
街の中央からかなり離れた位置にあるその建物は、何やら異様な雰囲気をまとっていた。
つい表情が強張るヤファ。
ヤファ「ブリジットさん・・・ここは?」
ブリジット「あぁ、ここはね・・・どこよりもいち早く様々な情報が集まる所さ。平気、何かあったら私が守るから〜」
頭を撫でながら中に入っていく。恐いせいか、ヤファは強くブリジットの手を握ったまんまだった。
中も異様な雰囲気であった。前にはカウンターらしき物があり、その周りに人が二、三人。こちらをじっと見ている。
その視線がやけに恐い。うるうると涙目になるヤファ。
すると、ブリジットがヤファの顔を覗き込み「平気平気〜」といって笑う。
カウンターの方へ向かうと、カウンターの所に一人の店員らしき人物が他の人と話をしていた。
こちらを確認するなり、慌てて話を打ち切ってこちらへ顔を向ける。
店員「おぉ!お久しぶりで御座いますブリジットの旦那!ささ、どうぞ席におつき下さいませ」
ブリジット「前に特別扱いはやめてくれっていったのにな・・・」
苦笑しながら席へつく二人。
店員「さて、本日はどの様なご用件でしょうか?」
冷たい水を差し出しながら話を進める。周りも心なしかこちらに注目している様な気がした。
ブリジット「最近モロクで何かしら動きはありましたか?あとその他何か目立った噂でも流れていたら教えてほしいのですが・・・」
店員「あ・・・はい、只今調べてきますので少々お待ちを」
そう言って後ろのドアからさらに奥へ入っていってしまう店員。
ヤファ「ブリジットさん、ここ嫌です・・・死臭がするし、周りも殺気立ってこちらを見てるし・・・」
そういって不安そうに辺りを見回す。やはりこちらを見ていた。
ブリジット「すまないけどもうちょっとだけ我慢してね・・・」
小声でそう話していると、先程の店員が戻ってきた。
店員「お待たせしました・・・」
いそいそと出てくる。手には大量の紙切れがあった。紙切れを見ながら口を動かしていく。
店員「はい・・・モロクでは最近賞金首の"ハルバート・ギルメス"の一味が"夢幻回廊"のギルトメンバー、"エース"という御方一人にやられていますね」
その言葉に「ふむ・・・」と声を漏らす。
ブリジット「そのハルバートという御方の賞金は如何程で?」
紙切れをまたぺらぺらと何枚かめくる。
店員「・・・400k、初の中・・・といった所でしょうか。まぁ行動等ははっきり言いまして小物ですがね」
さらりと厳しい事を言いながら、こちらを見ずに紙切れをじっと見ている。
店員「・・・どうやらあの名物酒場も関わってるみたいですね。エース氏とあそこを経営している夫妻はどうやらお知り合いのようで」
苦笑しながら"あの酒場"を思い出す・・・おお恐。
ブリジット「あの酒場とねぇ・・・しかも"夢幻回廊"の御方と戦ったとな。ハルバートさんは運も知識も無かった、という事でなむーと」
店員「まったくです」
店員「モロクでは他に目立った事はありませんが・・・この"夢幻回廊"のギルトマスター、フェイ・バレンタインの賞金が上がる一方ですね」
そう言いながらフェイの書かれている紙を目の前に出す。
肘をつきながらまじまじと見るブリジットとヤファ。
店員「どうやら随分とやっているようで・・・あげくに今いち表に出てきてくれないもんで噂が一人歩きした結果賞金が上がっていく、と」
そう一人ぼやいている店員を横目で見ながら、ヤファがブリジットの耳元へ近づいてくる。
ヤファ「あの人って前いた人ですよね?」
ブリジット「あぁ。・・・でもこんなに賞金かかってたなんて御父さんしらなかったな」
ヤファ「あはは・・・そんな茶化していいお話なんですか?」
二人で笑っていると、店員がわざと大きく咳き込む。慌てて元の位置へ戻るヤファ。
店員「後は・・・そう、フェイヨンにてあそこのダンジョンの狐が全滅、さらにその長である月夜花も行方不明ってお話がありますね」
その話にぴくっと体を震わせてこちらの腕を握ってくるヤファ。
ブリジット「・・・お話を続けて下さい」
店員「はい。それによって逆上した魔物が街に攻めてくるのではないかと心配した街の長が、今自衛団の他冒険者より有志を募っているらしいです」
ヤファの頭を撫でて落ち着かせながら、難しい表情で聞く。すると店員がずいっと体を乗り出してきた。
店員「旦那・・・まさかとは思いますがこの狐の件、関わってませんよねぇ?」
その問いかけに笑いながら手を振る。
ブリジット「おいおい、そゆ事件があったら何でも私のせいにするんじゃないよ〜。まぁしたい気持ちはわからん訳でもないがね」
店員「ならいいんですけどぉ・・・旦那って、でかい事件に必ず関わっているもんですから。あ、そういえば・・・」
何か気づいたのか、手をぽんと叩くと隣のヤファを指差す。
店員「このお譲ちゃんはどなたで?」
その問いかけに顔が一瞬だけ固まる。
ブリジット「・・・ははは、見ての通り盗賊さん、私の新しい仲間さ」
目を細くし疑いの表情を変えない。
店員「あなたが新しい仲間を作ったですと?・・・しかも言葉が棒読みですが?」
ヤファ「・・・ねぇブリジットさぁん、もう帰りませんか?」
・・・助け舟をありがとう!ヤファ!
ブリジット「っとと、ごめんごめんヤファ。じゃ、そゆことで我々はおいとまさせて頂きますよ〜」
そそくさと立ち上がるなり、出口の方へ歩いていく二人。
店員「旦那!前からいってますけど・・・モロクではあなたの顔を知ってる人多いんですから気をつけて下さいね!」
ブリジット「わぁーってますって!まぁ・・・来たら適当にどうにかするさ〜」
そう言い残し店を後にする。
店員「もうちょっとぴしっとした方がいいと思うんだけどなぁ・・・旦那」
そういって手に持つ紙切れを元の場所に戻そうと奥へ行く。そして紙一枚一枚を丁寧に戻す際、一瞬手が止まる。
店員「・・・あぁっ!いい忘れてた!!・・・しまったー」
イング「・・・さて、今日はどこにいこっか」
宿から出て少し行った所で話を切り出してきた。
ユキ「適当にぶらぶらしない?・・・いっとくけどバッタはもう嫌よ?」
同感なのか、アリスも無言で頷く。うねるイング。
イング「う〜ん、じゃあどこがいいの」
アリス「あ!あれみたさんじゃないの?」
イングの言葉を遮り大声を出すアリス。後ろを見るとみたらしと女性の騎士の姿が確認できた。
何やら女性騎士と楽しそうに話しながら歩いていくみたらし。
イング「どこにいくんだろ・・・?」
首を捻るイング。そんなイングを置いてって女性陣はささっと二人の後をつけて行く。
アリス「イング!何やってるの?あの二人付けるわよ〜」
にやっと笑いながら息を潜めみたらしと女性の騎士を追っていく。
イング「わわっ、ちょっと待って〜!」
〜つづく〜
〜あとがき〜
新年明けましておめでとう御座います!ブリジットです。
さて、ついにあの御方が出てきそうです!えぇ、無論今回でてきた女性の騎士さんでつね。
この御方は次回におおいに奮闘していただきましょうかね。
さて、今回出てきました鰤曰く「様々な情報が集まる場所」について少々。
そこはつまり賞金首の情報等を扱う場所なんですよ。扱うネタがネタだけに色んな情報まで入ってくる何でも屋さんです。
しかし、ある程度の実力が無いと場所を知る事さえできません。故に、そんな所で特別扱いを受けている鰤はかなりの異様な存在といえます。
そしてフェイさんの暗躍といった顔も出てきました。彼女はどのような行動をされているのでしょうか・・・?
次回にこうご期待!それでは♪
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