ラグナロク・オリジナルストーリー第十四話―仲



ユキ「・・・で、何でこいつまで一緒にいるのよ?」
朝の食事中に、あきらさまに嫌そうな顔をしながらぼそっと声を出す。
みたらし「なんだぁ、俺がきちゃ邪魔だったかい?同じギルトメンバーのくせに冷たいなぁ〜」
口ではそういっているが、どう見ても笑っている。
アリス「あはは、みたらしさん、そんな笑顔でいっても説得力ないですよぉ」
さらりとアリスが助け舟を出し、また初めに戻る。今日の朝はこんな感じだった。
かといってこの三人だけでみたらしは話をおわらそうとはしなかった。
この明るさと人懐っこさを活かし、もうハンク達とまで話をしているんだから、イングとしても少し驚きである。
みたらし「確かハンクだったか?結構腕はあるようだな〜・・・一回手合わせしてそう感じたさ」
ハンク「そ、そうでもないですよ・・・」
ハンクも恐縮してしまっているのだが、まんざら言われて悪いものではない、といった表情を浮かべる。
そんなハンクを見ながら、横ではラップがにやにやと笑いながら見ていた。
ラップ「アニキも正直じゃないっすね〜、嬉しいなら嬉しいといえばいいんすよ」
みたらし「そうそう、人間正直が一番だな!はっはっは」
そういって大笑いをする。周りもそれにつられ、笑い声を上げる・・・一人を除いて。
ユキ「あーもう・・・厄日としか言い様がないわね!」



食事が終わり各自が自由な行動をし始めた中、みたらしは不意にラップの方を向く。
目の前ではアリスが不思議そうな表情で、みたらしを見つめていた。
アリス「あの・・・どうかしたんですか?」
みたらし「あーいやいや・・・ちょっと彼と話してみたい、と思ってな」
そう言うなり、アリスに軽く手を振りながらラップの方に歩いていってしまった。
近づいてくるみたらしを確認するなり、「何すか?」と声を漏らす。
みたらし「ちょっと話したいんだが・・・時間はあるかい?」
ラップ「・・・あ、はい、平気っす!」
少し動揺しながら答えるラップに、少し吹き出す。
みたらし「はは・・・じゃぁちょっとだけ宿の外にでて話そっか」
そう言ってドアの方に歩いていく。
後ろから、ラップも神妙そうな表情を浮かべながらだがみたらしの後をついて行った。



みたらし「ん〜!やっぱ外は気持ち良いねぇ!」
そう言いながら腕を思いっきり上に向かって伸ばす。
ラップ「で、用事は何なんすか?」
腕をゆっくり下ろしながら、先程と違い少し真面目な顔つきになる。心なしか、周りの雰囲気さえ変わった様に感じた。
みたらし「では単調直入に言わせてもらおうか・・・お前、昔牢に入ってた事あるだろ」

ピクッ・・・

その言葉を聞き、ラップの顔から笑顔が消える・・・かわりに出て来たのは、感情があるのかないのかわからない様な冷たい表情。
みたらし「いや、お前をどうしようって訳じゃないんだ・・・ただな」
ラップ「・・・ただ?」
異様な程の殺気を向けながら、ラップが重い口を動かす。そんなラップを微笑しながら見る。
みたらし「それよりも前にまず・・・お前、俺に勝てるなんぞ思ってないよな?さっきからご丁寧に殺気まで放っちゃってるが・・・」
ラップ「・・・」
一向に表情が変わる様子は無い・・・小さくため息をつく。
みたらし「忠告しとくがな、仮にも俺はこのギルトで副長を務めさせてもらっている・・・てめぇみたいなヒヨッコがどうあがこうが俺にゃ勝てんよ」
そう言いながら、大きく笑う。
みたらし「初めに言ったが、俺はお前をどうするつもりはない。ただ確認がしたかっただけなんだ」
ラップ「・・・確認?」
みたらし「あぁ・・・お前、過去の事を相当知られたくないようだが・・・もしハンクやイング達にもこの事がばれたら殺そうとするのか?今みたいに」
そう皮肉げに言うみたらしを、何も言わずにきっと睨みつける。
睨みつけられたにもかかわらず、余裕を見せる。
みたらし「このままずっと隠し通せるなんぞ思ってないよなぁ?・・・昔お前がした」


ラップ「それ以上言ったら・・・殺す」


そうみたらしを今まで以上に厳しく睨みつけながら、小さく、呟く様に言う。
みたらし「そうか、お前はそうやって過去の事を知ってる奴を毎回殺してきたのか。おめでてぇ奴だな」
手を左右に大きく開きながら、にやにやとラップを挑発する。
みたらし「まぁ聞け。俺にならば切りかかろうが何しようが構わん・・・しかしだ」
恐怖にすら値しないしな、と後がらぼそっと言って付け加える。
そして、こほんと咳き込むと、今まで見せた事の無い様なプレッシャーがラップを襲う。
あまりの異様な殺気に、一歩だけ後ろに下がる。

みたらし「今みたいな行動を俺等の後輩のイング達やハンクにしてみろ・・・殺るだけじゃすまさせねぇぜ?」

ラップ「・・・」
みたらし「ま、そんなことブリさんが許さないだろうがなっ」
そう言っていつもの、へらへらとした笑いを見せるみたらしに戻る。
みたらし「はい、俺の話は終わり!どう、緊張したか?」
にぃぃっと笑って見せる。
当の本人であるラップは、少し複雑な、あっけに取られた様な表情をしている。
みたらし「まぁ俺はあいつ等にお前の事を言うつもりは無い。いずれお前が決着をつけるべき問題だしな・・・それだけは言っておく」
そう言って、ラップに背を向け、宿屋の方へゆっくりと歩いていく。
みたらし「あぁ・・・ユキの事、あれ後でしっかりとけじめつけとけ〜・・・後、宿で俺と会ってもあまりぎくしゃくすんなよ?まぁ無理にとは言わんがな」
周りを気にせず、また笑い声を上げる。
ラップ「・・・」
そんな彼の背中を、じっと見つめていた。



各自の食事が終わり、また全員がまばらな行動を始める。
そんな中、ラップが何か意を決したかの様な表情を浮かべながら、ベットで寝転がっているユキに向かって歩き始める。
ユキ「・・・何よ?」
ラップが近くにいるのに気付き、あきらさまに嫌そうな表情、及び声を上げる。
周りも、心なしかその状況を心配そうに見つめていた。ただ、みたらしだけが一点を集中するかの様にラップとユキを見つめている。
すると、急に床に膝をつき、頭を下げ、大声で声を上げた。
ラップ「あの度は本当にすまなかったっす!」
ユキ「・・・え、えぇ?ちょ、ちょっと!」
ラップの突然の土下座に、しどろもどろと焦り始める。しかしラップは頭を上げない。
ラップ「ユキさん、あの時はユキさんの気にしてる事を言ってしまったのはいくら謝っても謝りきれないっす・・・でも」
ユキ「・・・でも、何よ?」
腕を組みながら、ベットの上で見下ろしながら先を促す。
ラップ「でもユキさん達に声をかけたのは、貴方達の美しさにひかれてっす!」
一同「ぶっ」
ラップのあまりに唐突な発言に、いっきに吹き出す。
ユキ「な、ななななななななななななななな」
目の前で言われたユキが、顔を真っ赤にしながら声を出す。目の前で言われたせいか、効果も一番でかいようだ。
みたらしも、その光景を見て笑いをこらえている。
ハンク「・・・やはり天然は一味違うな」
誰にも聞こえない様に、冷静にぼそっと呟いた。



ユキ「で、ででで・・・ふ、ふぅ・・・な、何が言いたいのよ!」
あきらさまに動揺しながら、やっとの思いで声を出す。
ラップ「そんな美しいユキさんなら心の器量もでかいはず!どうか今までの軽率な行動を許してほしいっす!」
ユキ「ほ、褒めたって何もでないわよ!」
答えになってない返答に、我慢の限界なのかみたらしが一気に笑い出す。
みたらし「・・・はっはっは!ユキ、お前の負けだ、負け!もう意固地はってねぇで許してやれって!」
言い終わると、また周りを気にしない大声で笑い出す。
すると、不意にイングがユキとラップの方に近づいてきた。
イング「ユキ、もぅ許してあげられないかな?ちょっとしか一緒にラップさんとはいないけど、悪い人じゃなかったでしょ?」
そう説明するのに追い討ちをかけるかの様に、今度はハンクが前へ出てくる。
ハンク「ユキさん、ラップの行動に関しては俺からも謝らせてもらう。でもこいつも悪気があってやった訳じゃないんだ・・・許してやってはもらえないか?」
ばつが悪くなったのか、ユキが小さく「う〜・・・」と声を漏らす。
ユキ「わかったわよ!あの事は一応水に流してあげる!」
腕を組み、ぷいっと外に顔を向ける。
ユキ「でも!貴方達私達のサポート目的できたのよね・・・ちゃーんと働いてもらうから覚悟しなさいよ!」
その返答を聞き、見る見るラップの表情が明るくなる。
ラップ「ありがとーっす、ユキさん!!」
そう言って、ユキの方に手を広げながら走っていく。
ユキ「な・・・何抱きつこうとしてんのよ!こないで!」
抱く直前に放たれたアッパーに、宙を舞うラップ。

どさっ・・・

ぐったりとしたラップを、イングが急いで看護し、アリスがヒールをかける。
ハンク「まったく、こいつは・・・ユキさん、すまなかったな」
そう言いながら、苦笑まじりの表情を向ける。
ユキ「まぁ良いわよ・・・私も実際意地になっちゃってたし、これでお互い様よ」
そんなユキをみて、ハンクが首を深々と下げた。
ハンク「・・・ありがとう」



その夜・・・ユキがぎくしゃくしなくなった為か、非常に雰囲気がもりあがっていた。
みたらし「まぁユキにも女らしい点があったってのが今日の問題だな!ははっ」
ユキ「問題ってどういう事よ!失礼ね!」
昨日とは違う、冗談まじりの怒りを表す。そんなユキをみて、みたらしが笑っていた。
イング「・・・うん、でも仲が戻って本当によかったなぁ」
二人を見て笑う。
アリス「ね!やっぱし仲がこじれてたらつまらないもんね!」
手を合わせながら、その意見に同調する。
ハンク「はは、お前等といると色々と楽しめそうなのは今日でよぉーくわかった」
そう言って、コップの水を飲み干す。
ハンク「まぁ、色々とごたごたしちまったが・・・改めてよろしく頼むよ」
アリス&イング「はいっ!」
威勢の良い声に、微笑をしながらまた食事に目を向ける。



そんな時だった。
「あーあー・・・マイクてすとーマイクてすとー・・・メーデーメーデー・・・ん?メーデーって何だ?」
不意に、みたらしとユキの方から男性の声が聞こえた。みたらし以外全員がびくっと体を振るわせる。
「よーし、調子は良好!はぁい、ギルトの皆元気かなぁ?ギルトのアイドル、ブリジットだよ☆」

沈黙。まさに今にぴったしの言葉。

その言葉が全員の脳裏によぎった。
ブリジット「・・・突込みなしかよ!・・・いーよーだ。」
いきなり高らかに声を上げたかと思いきやいきなり凹む。
周りの雰囲気が少し変わっていく中、不意にみたらしだけが真面目な表情を浮かべていた。
ブリジット「えー・・・では本題へ。ユキ以外のこのギルトに所属する皆様、モロクの宿屋へお越し下さい・・・」
そこで、一旦言葉が途絶え、すぐにまた言葉の続きが放たれた。

ブリジット「ひじょーに申し訳ありませんが・・・久々に"お仕事"が入りました」

イング「"お仕事"?」
不意に、イングから疑問の声が上がった。
他の全員もこの「お仕事」について少し疑問らしく、表情が固い。
みたらし「ふむ・・・随分と久しい言葉だな」
そんな声を上げるみたらしの方を向くユキ。
ユキ「また?またってどういう事よ?それに仕事って何?どうして私だけきちゃだめなのよ?」
みたらし「そんないっぺんに聞くなってば、このウィスが終われば説明してやっから・・・」
こちらの話の都合なんぞお構いなしに、ウィスから声が発せられる。
ブリジット「えー・・・時間は明日の夕方までに着くよう心がけて下さい・・・ってわたた、何?どうしたんだい?ヤファ?」
不意に、話をとぎられてしまった。
その後も、あちらで何か起こっているのか、話が途切れたまんまであった・・・すると。
「ほえぇ〜・・・こんな物から他の人へ声が伝わるんですかぁ・・・」
不意に、女性の声が聞こえた。そう、前の時と同じ声である。
すると、おぞましいスピードでエンペリウムの欠片を口の方へもっていくユキ。



ユキ「ちょっとあんた!一体誰なのよ!」
そう怒鳴りつけられ、声の主が一瞬声を出さなくなる。
「は、はぅ・・・え、えーん、ブリジットさぁん〜」
そう言ったきり、声がしなくなってしまった・・・数分後。
ブリジット「・・・げほげほ。や、やぁユキ!調子はいかがかな?」
ユキ「・・・ブリジット」
ブリジット「は、はぃぃ!」
蛇に睨まれた蛙の様な状況。周りもただオロオロしているしかなかった。
いつもの数倍も低い声で、話を続ける。心なしか、体が震えている様にも見える。
ユキ「・・・今さっきの声、一体誰?」
今度はいきなり声を高くあげた。今まで聞いた事のない声に、イングとアリスが顔を青ざめる。
ブリジット「はて、何の事ですかな?・・・声?嫌だなぁユキ、幻聴かい?」
ユキ「・・・今さっきの声、一体誰?」
聞いているのかいないのか・・・同じ質問をまたする。
イング「こ、恐い・・・ユキ絶対怒ってるって」
アリス「あ、あはは・・・誰がどう見ても怒ってるわね」
そんな事を口々に言う外野を気にせず、まがまがしいオーラを発しながら恐怖の質問攻めは続く。



ブリジット「いや、だから・・・幻聴」
ユキ「いい加減しらばっくれると怒るわよ?ギルトマスタ〜?」

びくっ・・・

普段絶対使わない言葉を聞き、体をぶるっと振るわせるアリスとイング。
ちなみにハンクとラップは真面目そうに声の方を向き、みたらしは・・・笑いをこらえていた。
ブリジット「・・・え、えと・・・あ、ほら、ここ宿屋だからさ、そこの店員さんがさっき入ってきてね、多分その声じゃないかい?」
ユキ「・・・その割には随分と慣れ慣れしかったわねぇ?」
ブリジット「そ、そらぁ私が上下関係作るの嫌いだからさっ、客だからって相手に敬語を強要するのは嫌なんでねっ」
何とかユキの攻撃を紙一重でかわし、反撃を試みる・・・しかし
「・・・ブリジットさぁん、平気ですか?」
ブリジット「あぁ、平気だよ・・・・・・・・・・・・あ」
最後のあ、という声がすべてを物語っていた。
ブリジット「あ、あはははははは・・・いやぁ、店員さんに寒くないですか?と言われて平気と答えたんだからね?」
その言葉を聞き、ユキの体がぶるぶると震え出す。
ユキ「・・・ブリジット」
ブリジット「は、はい・・・何でしょうか?」
周りが息を飲み、静まりかえる中、ユキは・・・

ユキ「ひ、ひぅっ、・・・ぐすっ」

周りの目を気にせず、泣き始めた。
駆け寄ろうとしたイングとアリスを、ハンクが顔を横に振りながら止める。
ブリジット「え、えぇ!?ちょ、ちょっとユキ、どうしたの?ど、どこか痛いのかい?」
自分が原因と気付いていないのか、声からもあきらさまな動揺が見られた。
ユキ「う、うぅっ・・・な、なんであんたは・・・ぐすっ、隠し事ばっかするのよぉ!そんなに私って信用ないの!?」
ブリジット「・・・・・・むぅ」
この場に沈黙が走り、外の音のみがこの場を支配している・・・
すると、この雰囲気が嫌いなのか、みたらしがエンペリウムの欠片を取り出した。
みたらし「ブリさん、最低限何故隠すのかぐらい教えてあげたらどうよ?」
ブリジット「うーん・・・危険だからさ」
ユキ「危険危険って、もう聞き飽きたわよ!」
まるで子供の様に、泣きながら大声を出す。
ブリジット「ま、まずはユキ、泣きやんでって・・・」
このようなやりとりがこの後もずっと行なわれ、やっと泣きやむのに数十分の時間がかかっていた。



ブリジット「ふぅ、ようやく泣き止んでくれた・・・泣き声を聞くのは嫌なんだよぉ〜」
そういって、ウィスごしから大きなため息が聞こえた。
ユキ「ねぇ・・・そのお仕事、私はどうしてもいっちゃ駄目なの?」
落ち着きを取り戻し、いつもの口調で話し始める。
ブリジット「うん・・・ユキには悪いけど、まだ・・・うん、まだこの仕事を手伝ってもらう訳にはいかない」
その言葉にカチンときたのか、ユキがむっと頬を膨らました。
ブリジット「でもね、でもだよ?君にもいずれにせよすべてを話さなくちゃいけないってのはわかってる。でも今はまだ早いんだよ・・・すまない、我慢してくれ」
エンペリウムの欠片を目の前のテーブルに置き、腕組をして何やら考え事を始める。
その時、みたらしが何かを思いついたのか、にやにやしながら欠片を手にとった。
みたらし「しっかし・・・一人の少女を泣かすたぁ、罪だねぇ」
ブリジット「う、うぅ・・・そんなに思いつめてるなんて思わなかったんだよぉ・・・」
そんな他愛もない会話がされ、周りの雰囲気も和やかになり始めたその時であった。
ブリジット「でもユキ、なんで私の近くにいた店員さんにあそこまで過敏に反応したの?」



ぴくっ。
一瞬少しだけ体が動いたと思いきや、あせあせと欠片を手に取る。
ユキ「な、なんでもないわよっ!」
ブリジット「じゃあなんであんなに怒ったのか説明してよぉ〜・・・やはり私に非が?」
ユキ「あの・・・えと・・・はぅ」
最後の言葉と共に、ユキの顔がみるみる紅潮していく。
そんな光景を、意味ありげに笑うみたらし。
みたらし「はっはーん、そういう事かぁ・・・いやー、辛いねぇ、ユキ!はっはっは!」
ユキ「う、うるさいわねっ!!な、何が辛いっていうのよ!!」
顔を真っ赤にしながら怒鳴り散らすが、みたらしは相変わらず笑っている。
みたらし「はははっ!じゃあ何が辛いのか詳しくこの場でギルトの先輩である俺がいってやるよ!」
ユキ「な、なななななな!」
再びにやっ、と笑う。
みたらし「何だいユキ、言ってはまずい事なのか?」
返答できない様ないじわるな質問に、焦りの色を深くさせていく。
ユキ「そ、そんな事・・・!」
耳まで赤くさせ、パニック状態に陥る。
よほどこのネタで遊ぶのが楽しいのか、みたらしはまだまだ追撃の色を消そうとはしない。
ブリジット「おうぃ、一体何の話してるん?」



一瞬、そう一瞬だがこの場がまた固まった。
ブリジット「え、何、どうしたんだい?」
状況が理解できず、困惑の声を上げる。
まだ真っ赤な顔をしているユキの肩をぽんぽんと叩き、「やっぱ辛いねぇ」と意味深にユキにだけ聞こえる様に話した。
椅子に座り直し、助かった様な、残念の様な表情をするユキ。
セニア「・・・ブリちゃん、鈍感ねぇ」
時「・・・鈍感という範囲を軽く通り越しているのでは?ブリジット殿」
みたらし「普通なら今の会話で察する事は簡単だよなぁ、ブリさんらしいと言うか、何と言うか・・・」
いっきにギルトメンバーから非難の言葉を投げかけられた。
ブリジット「え、えぇ?な、何が鈍感なんだい?」
三人「・・・はぁぁ・・・」
いきなり三人が同時に大きなため息がつかれる。
ブリジット「うぅ〜・・・今日は皆やけにいじわるじゃないか?ねぇ、ユキ?」
ユキ「し、知らない!」
ブリジット「うぅ、ユキもひどいぃ〜〜」
ブリジットの悲しみに満ちた声が響き渡った。



ブリジット「ふぅ、やっとさ報告終了・・・っと」
宿屋のベットから下りて、腕を大きく伸ばす。
ヤファ「えぅ〜・・・恐かったです、すっごく恐かったですぅ!」
半泣きになりながら、目を擦る。
ブリジット「はは、ヤファも運がなかったよ・・・っと」
途中で言葉を切ると、ドアの方に向かって歩き出す。
ヤファ「あれ、どこいくんですか?」
ブリジット「いやはや、ご飯を頼むの忘れてたからね、今から頼みに行こうと思ってるんだ」
ぐぅぅぅぅぅ〜〜・・・
その言葉と共に、不意にヤファのお腹が鳴った。真っ赤になって、下を向く。
ブリジット「ははは、すこぉし待っててねぇ〜?」
手を左右に振りながら、部屋を後にした。



ブリジット「ふぅ、夜の風は冷たくて気持ちがいいなぁ・・・」
そう言いながら、宿屋のすぐ前で一人呟く。
あの後、食事が食べ終わるやいなや、すぐにヤファが布団に入ってしまい、邪魔にならない様に外にでてきたのだ。
反面、眠気が襲ってこないので暇つぶしに・・・という考えもあったが。
何か考え事をしながら、近くにあったベンチに一人座り込む。
夜の冷たい温度のせいか、ベンチがひんやりと冷たい。
ブリジット「・・・冷たい、か・・・」
・・・

雨の降る大きな城の前。
真っ赤な大地を埋め尽くす、人形と成り果てた人と魔物。
ぼろぼろになりながら、辛うじて立っている一匹の魔物と一人のウィザード。
こちらに向けられる、哀しく、冷たい眼。

ブリジット「・・・この仕事はやっぱし私には向いてませんねぇ」
ムナック帽をより深く被り、そう、一人ぽつりと呟く。
上を向くと、きらきらと星が輝いている。ふっ、と静かに笑う。
ブリジット「生き残ってしまった事を喜ぶべきなのですか?」
そう、空に向かって質問を投げかける。その質問を答えてくれるわけもなく、闇は一層深くなる。
ブリジット「・・・戻りますか」
立ち上がり、ヤファの居る宿屋に戻っていく。
闇はより一層深さを増し、時間はすぎていく。



つづく




〜あとがき〜
こんちゃっ!お久しぶりでございます!ブリジットでーございやす!
さて、今回は新しい話に入る上ではかなり重要なお話となっております。
初めに出てきたラップとみたらしのやりとり、あれは何を意味するものなのでしょうか?ラップの過去に何が!?
さらに、新しいお話としましてギルトの"仕事"なるものが登場しました。
この話が次回より展開されていきます。
さらに、最後に少し触れられたブリジットの過去のお話、あれは何だったのでしょうか?
まだまだつづきまーす!次回をおっ楽しみに!
それでは♪
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