ラグナロク・オリジナルストーリー第弐拾話―魔術師



チチチチチ・・・
小枝に小鳥が止まり、辺りを忙しなく見渡している。
その木の真下に、見るからに若そうな剣士が蝶型モンスター「クリ−ミー」と戦いを繰広げている。
その剣士の表情に、敵に対する恐れは無い。


「たぁっ!!」
威勢の良い声と共に、剣士が手にしているツルギがモンスターをモンスターを切り裂いた。
ふぅ、と軽く息を大きくふいて額の汗を拭う。
すると、近くで見守っていた盗賊がその剣士近づいていく。
「どうやらこの程度のモンスターなら十二分いけるようになったな、上出来だ、イング」
そう言って、軽くイングと呼ばれた剣士に拍手を送る。
当の本人は、照れ隠しに少し笑って見せている。
イング「ありがとうございます、ハンクさん」

「ソウルストライク!」
イングがお礼の言葉を言うとほぼ同じタイミングで、後方から女性の声が辺りに響き渡る。
イングとハンクと呼ばれた盗賊が、ゆっくりと後ろを振り返る。
「・・・なーにじろじろ見てるのよ」
先ほどの魔法を唱えた魔術師・・・もといユキが、見ると同時に腰に手を当てながらこちらを睨みつけていた。
隣では、アコライトのアリスが口元を少し手で覆いながら笑っていた。
すると、ふっと横から一人の盗賊・・・ラップが顔を出し、こちらに向かってくる。
ラップ「アニキー、この面子だったらここはもう役不足かもしれないっす」
弓を軽く振りながら、ここはもうだめだというジェスチャーをしてみせる。
・・・確かに、皆十分ここじゃやっていけるしなぁ・・・
どこがいいか、少々思考を巡らせてみた。
・・・
・・

ラップ「アニキー・・・だったら兄貴村なんてどっすか?」
ハンク「兄貴村かぁ・・・」
兄貴村・・・そうだな、やっていけるかもしれない。
自分達が言うのもなんなんだが、イング達は前よりも格段に力を付けてきている。
今の状態なら、兄貴だっていけるだろう。
・・・何より装備が良いからなぁ、こいつ等は。
少々やりきれない気持ちが、自分を取り巻きつつあった。
ラップ「ア〜ニ〜キィ〜?なんでそんな表情しているんすか?」
ハンク「あ、いや、何でもない」
・・・表情に出てたか。
少々わざと大きな声で咳き込みをして、ぴしっとしながら三人の方を向いた。
アリス「ハンクさん、どうかしましたんですか?」
見るや否や、まず声をかけてきたのはアリス。
まぁね、と軽く会釈をした後、俺は三人にこう言った。
ハンク「えー・・・今日はちょっと狩場を変えて、兄貴村に行くぞ」



兄貴村・・・広大な森の先にある、オーク達の住居の辺りを指す。
屈強な戦士のオーク、彼等は何故か外見からだろうか、「兄貴」と人間から呼ばれている為にこの名が付いた。
この兄貴村から、さらに地下の方に行くことも出来る・・・その場所の名は、オークダンジョン。
そう、かつてハンクとラップがフェイと出会い、今に至るまでの一連の要因となった場所。
そういう面では、ハンク達には少々馴染みの深い所かもしれない。



ハンク「奴等は俺等を見つけたら見境も無く攻撃を仕掛けてくる、気をつけろよ」
着いたと同時に、全員に警告を促しておく。
こういう事は隠さずに伝えた方がいい。何かあった後では遅いからだ。


ユキ「オーク、か・・・実際見るのはこれが初めてになりそうね」
ふと、私はこんな独り言を漏らしていた。
自分でいうのもなんなんだが、私はあまり色んな所に行った事がないのだ。
そういう面では、今回のこの場所はちょっと新鮮味があった。
他の二人はどんな心境なのかしらね?
そう思った私は、ちらっとイングとアリスの方に視線を向けた。
アリス「うー・・・怖いなぁ・・・」
そんな弱音を上げながら、アリスはがしっとイングの背中に張り付いていた。
イング「あの、アリス・・・お願いだから離れてくれない?」
少々うろたえながら、顔を真っ赤にしてアリスに離れる様促している。
・・・相変わらずねぇ、この二人は。

グォォォォォォ・・・!

突如、あきら様に人間でないくぐもった声と共に、緑色の巨体が一つ、こちらに向かってきた。
ハンク「イング!そっちに向かってきてるぞ!」
その言葉を聞き、即座にアリスがイングの背中から離れる。
アリス「ブレッシング!」
瞬時に、アリスがイングに補助魔法をかける。
イングは、手にしたツルギをぎゅっと右手で持ち、緑色の巨体・・・オークと対峙していた。
私も加勢しなくちゃ・・・!



どれくらい経っただろうか。
あれから、自分達は予想に反して快調な滑り出しをしていた。
自分でも驚いたのだが、オークの振るわれる斧がしっかりと自分には見えるのだ。
おかげで、あまりこちらは攻撃を加えられずに倒す事が出来た。
ハンク「なんだ、意外といけるじゃないか」
ハンクも意外だったのか、笑みを浮かべながら自分達を見る。
イング「そうですね・・・僕もちょっと意外でした」
頬を掻きながら、率直な意見を言う。
ラップ「やっぱ、確実に力を付けてきている証拠っすね」
辺りを多少警戒しながら、ラップがこちらに笑顔を浮かべながらそう言った。
・・・強くなった、か。
今一掴みにくいその言葉にどう反応していいかわからず、辺りを見渡した。
広大に土地、そこにある溢れんばかりの木。
こういうのも何なんだが、オーク達がここに住んでいるのも何だか解る気がする。
こうやって自分達と戦わなければ平和な場所、まさにそのものだったからだ。
・・・
イング「そろそろちょっと歩いてません?」
そう、ハンクに言った時だった。



いきなり、遠くの方から一人の剣士が、切羽詰まった表情を浮かべながらこちらに向かって走ってきた。
非常事態と察知したハンクは、とっさに短剣を握り締めながら剣士の方を向く。
剣士「あぁ、こっちに人がいるなんて・・・すみません!皆さん逃げてください!」
自分達を見ると同時に、剣士の表情には安堵ではなく、申し訳なさそうな表情が浮かんでいた。
状況がよく読み込めずに、ハンクも短剣を元の位置に戻そうとした時だった。

ゾクッ・・・

突如、異様な悪寒に襲われ、鳥肌が全身を駆け巡る。
・・・何だ、この寒気は・・・
そう思いながら、その剣士に再度視線を向ける。
ハンク「!!!」
声が出なかった。
剣士の後ろにいたもの。
外見こそオークとなんら変わりは無いが、あの銀色の巨体は・・・
ハンク「ま、まずい!イング、アリス、ユキ、ラップ!早く逃げるぞ!」
咄嗟に声を出し、全員に逃げる様促す。
まずイングとアリスとユキが、訳も解らずに自分の後方へ走っていった。
それを追うかの様に、次にラップが三人の後ろについていった。
その姿を確認した後、剣士がこちらに来たと同時に横にくっ付く様に走り出す。
剣士「すみません、巻き込んでしまって・・・」
非常に申し訳なさそうな表情をしながら、しきりに後ろを警戒している。



その剣士は、綺麗な白い短髪をたずさえていた。
装備こそは普通の物を使っている様だが、なかなかの熟練者である事が雰囲気からして何となく解る。
ハンク「いや、いい。困っている時はお互い様ってな」
それに、もぅ厄介ごとに首を突っ込むのは慣れたしな、と後から付け加える。
ハンク「しかししつこいな・・・剣士さん、奴に何かしたのか?」
普通だったら、これぐらい距離を取れば諦めるはずなのだが、後ろの奴は一向にスピードを落とす気配がない。
むしろ、異様に殺気立っている気がしてならない。
そのこちらに向けられる殺気は、感じていて痛いくらいだ。
剣士「えぇ・・・自分の仲間がオークヒーローをやっつけちゃったもんで・・・」
ハンク「あ、あのオークヒーローをか!?」
オークヒーローっていえば、この兄貴村の長じゃないか・・・
想像し難いその言葉に少々戸惑いながら、再度後ろを振り返る。
ハンク「・・・でもまぁ、そう考えれば今のこの状況も理解できるな」
剣士「・・・です、すみません」



ラップ「アニキ、まさか後ろから追いかけきてる奴って・・・」
イング達の後を追っていたはずのラップが、少しスピードを落としたのだろう、自分の少し前方に位置する形で話し掛けてくる。
ラップは、あえてそのモンスターの名前を言わなかった。
まぁ言いたくない気持ちもわかるんだがな・・・
苦笑しながら、ラップに答えた。



ハンク「・・・あぁ、"ハイオーク"だよ」



〜つづく〜




あとがき
こんちわっ、遂にコモドが実装されてラグナ内部は忙しい今日この頃、いかがお過ごしでしょうか?
鰤ことブリジットでございますっ。
さて、今回は少々新しいお話に進んだわけですが、いかがでしょう?
新しく登場された剣士さんの素性も気になる所ですねっ!
それでは、次回をおったのしみにぃ!
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