ラグナロク・オリジナルストーリー第弐拾四話―能力



カタリナ「おりゃぁ!」
大きな声と共に、ブリジットが剣を振り下ろすよりも一瞬早くカタリナの戦斧が横に振るわれた。
それを後方に飛びのき、紙一重の状況で回避する。
ブリジット(いくら強かろうと、斧である以上!)
必ず、ほんの一瞬であるとはいえ隙が出来るはず。
そう読んだ通り、避けると同時にほんの少しだけ本体に隙が見られた。
それを見逃さずに、剣の柄を勢いをつけて叩き込む。
苦しげな声をあげつつ、そのタイミングにあわせてカタリナの大きな拳が肩に思いっきり振るわれた。
その勢いにのせて、カタリナから距離を取る。
ブリジット「・・・ふむ、なかなかですねぇ」
やはり、この人は強い。
今の咄嗟の攻撃、一撃を受けても倒れない、そして何よりその姿勢。
現役だったら、もっとか・・・。
そう思った時、ふと自分が笑っている事に気がつく。
楽しいのか、こうして戦う事が・・・。
カタリナ「そうやって、笑っていられるのも・・・!?」
そう声を上げ、二回目の攻撃が振るわれようとしたその時。

カタリナ「な、なんだ!?」

突如、ブリジットと対峙しているのも忘れて上空を見渡す。
ブリジット「・・・始まって、しまいましたか」
悔しそうに唇を噛む。
二人は気が付いたのだ。
カタリナは、この異常な殺気に。
ブリジットは、禁術の効果が現れ始めた事に。

空は、それを表すかの如く赤かった。

・・・遊んでいる余裕は、ないな。
ブリジット「すみません、せっかく楽しめていたのですが」
そう、軽く声をかけて後ろのペコペコに呼ぶ。
前方にゆっくりと歩みだす。
彼が気がつくよりも早く。
両手剣すら軽く持ち上げる自分の手が、彼の体の全体重をもろともせずに持ち上げる。
そして、思いっきり空中に向けて放り投げる。
今、彼は自分が宙に浮いている事すら解ってはいないであろう。


ブリジット「・・・先を急がなければいけないので失礼します」

そう言葉を残し、ペコペコに乗って走り出した。
その後ろには、地面に叩きつけられるカタリナの姿があった。



ブリジット「このプレッシャーは・・・」
チリチリと、自分の感覚を直接触るかのような威圧感。
それは、前方と後方から発せられていた。
前方はフェイさん、後方には・・・
ブリジット「・・・玉藻前さんと、彼女か」
駒は揃っている。
しかし・・・
ブリジット「何で、彼女がまたここにいるんですかね・・・」
・・・大抵、予想はつくのですがね。
貴方は、何を一体考えて・・・
そう考えている内に、目的のオアシスにまで辿り付く事ができた。
ブリジット「遅かったか・・・」
ペコペコからゆっくりおりて、背中に付けている両手剣をゆっくりと抜く。
前方には・・・惨劇ともいえる状態が広がっていた。



フェイ「アァ、アァァァ・・・」
砂漠の砂を真っ赤に染めて、苦しげにごろごろと転がり続けるフェイ。
その過程で、体がじょじょに肥大化しているのも見受けられる。
バンッ!
そう勢いのある音をたてながら筋肉が裂け、再度そこを修正するかのように膨張を繰り返していく。
気がついた頃には、昔のある彼女の面影はほとんどなくなっていた。
腕を組み、顎に手を当ててゆっくりとその光景を見つめる。
ブリジット「このままでは堕ちますね・・・」
彼女には、重荷だったという事か。
この禁術に耐えられない人間は、己の体を乗っ取られ殺人のみを生きがいとする殺戮人形と化す。
ブリジット(貴方は、そうまでして一体何をしたいのですか・・・)
その問いかけは、誰にしたのかはわからない。
ただ、そう思わないと気が今一晴れなかった。
剣を構えつつ、ふと五日前にフェイさんが言っていた事を思い出す。

フェイ「もし、私が堕ちた時は貴方が私を殺して」

・・・。
嫌に、目の前のプレッシャーが嫌でしょうがない。
この状況を、嫌がっている自分がいるな・・・。
そんな自分を苦笑しつつ、剣を正眼へと構える。
ブリジット「さて、どうしたものか・・・」
そう考えるも、答えはでない。
むしろ、悪化していると言ってもいいだろう。
救うと決めた。
しかし、その道は果てしなく遠く、険しい。
フェイさん、貴方は今もまだ意識が残っているのですか?
残っているならば・・・
そう考える自分の意志とは反対に、彼女は自分に向かって走り出していた。



その名前の由来の通り、持ち主の生き血を吸って深紅となった刃が自分目掛けて振るわれる。
振るう間にも、彼女の体は己の限界を超えて筋肉が何度も苦しげにはちきれている様子が伺えた。
ブリジット(・・・早い!?)
咄嗟に後ろに下がるも、先ほどまで自分の頭にあったムナック帽子が後方に吹き飛ばされた。
咆哮を上げながら尚も追撃の手を緩めない彼女の体を、手にしている2HSできりつける。
ブリジット「ぬ・・・」
まるで岩でも切るかのような感触、そして瞬時に切られた場所が回復されているという現状。
それは、多分体を乗っ取られている故についた追加のようなものであろう。
問題はそこではない。

先程見せた、異常なまでの早い攻撃である。

ブリジット「やっかいですねぇ・・・」
そう思いつつ、彼女と少し距離を取る。
この能力、同期の頃にいた彼の能力と似ているな・・・。
そうなれば、性質が悪い。
しかし、乗っ取られている状態ではまだ・・・
そう考えている自分の隙を突くかのように、目の前でフェイの二度目の攻撃が振るわれる。
咄嗟に大地を蹴って、軽くかわす。
ブリジット「ん!?」
警戒していたプレッシャーが、急に近づいてくる。
急いで横を向くと、いきなりもみあいの状況で二人の間を裂くように割り込んでくる二つの影。
一つは玉藻前さん、もう一つは・・・

ブリジット「はにゃ!?時さん!?」


時「ブリジット殿!?」
少々呆け気味な自分の顔を見て、彼本人も驚いた様子で自分を見る。
しかし、その視線はすぐさま後ろにある存在に向けられる。
ブリジット「・・・」
出来れば、彼をこの場に立ち合わせたくはなかったのだが。
予定外、だな・・・
時「フェイ!!」
時のその叫び声が、オアシスに木霊した。



玉藻前「ふっ、無様ね」
異形の者へと成り果てたフェイの姿を見て、はき捨てるかのようにそう声を出す。
二人が割り込もうとも、彼女のターゲットはどうやら自分なようだ。
再度、ゆっくりとフェイが自分に向けて狙いを付け始めていた。
ブリジット(やはり、私を狙ってきますか・・・)
そうなれば、やはり今彼女を支配している精神は・・・彼か。
まだ未練を、今も尚持ち続けているのですね・・・。
至極当然なのだから、それに関しては悪いとは思わない。
しかし・・・
ブリジット(彼女を犠牲にさせる訳にはいかない!)


時「ブリジット殿!?」
剣を構える自分を見て、驚いた声を上げる。
ブリジット「・・・」
どうする。
どうやって助ける。
そう自分に問いかけを続けている内に、フェイが自分に飛びかかろうとしていた・・・その時であった。
突如フェイの動きが止まり、何か戸惑った様子で立ち尽くす。
どれくらいそうしていただろうか。
ゆっくりと、ゆっくりとフェイの口が開いていく。
そして、何かを言おうとした刹那。

バンッ!!

一瞬大きく彼女の体が跳ねる。
ブリジット「な・・・!?」
次に映ったのは、砂漠に降り注ぐ血と、先ほどまでフェイの体についていた筋肉の塊。
フェイの姿は、確認できない。
ブリジット「・・・フェイさん」
がっくりと肩を降ろし、地面に膝をつく。
ブリジット「・・・遅かった」
やっと口がら出す事ができたのは、その一言だけだった。
内なる力に、抑制が効かなかった故の結果であろう。
自分の不甲斐無さに頭がきて、地面を大きく拳で叩く。
ブリジット「救えなかった・・・」
たとえ何であろうとはいえ、人一人でさえ救う事が出来ないのか・・・自分は。
ひどく、自分が小さく見えた。
時「ブ、ブリジット殿」
横から聞こえるのは、戸惑った声を出す時の声。
ゆっくりと、彼に向けて顔を上げる。
ブリジット「すまない、時さん。私は彼女を・・・」
その言葉を聞き、普段表情に出さない彼からは想像が付かない位の哀しげな表情が見えた。
その顔が、ひどく苦しく自分に圧し掛かってきた。
しかし、納得が出来ないかのようにフェイがいた場所を見つめる。
その先には・・・


血煙の中、生まれたままの姿で倒れているフェイの姿があった。
先ほどよりも色濃くなったカタールを身に付け、ふらふらと立ち上がる。
玉藻前「一体何が」
そう呟いた彼女に、時がゆっくりと視線を向ける。
ブリジット「・・・む」

ブンッ!

玉藻前「え?」
異常な程までの空を切る音と共に、玉藻前の左腕が無くなっていた。
小さく声を上げつつ、次に振るわれた攻撃を剣で押さえてフェイを思いっきり蹴りつける。
それだけ勢いがあったのか、お互い数十メートル飛びのく。


ブリジット「・・・耐えられた、のか」
その安堵感を感じさせるのもつかの間、すぐさま次の作業に移らなければいけない状態になっていた。
・・・フェイさんの、あの動き。
人間離れしたあの動き、そして攻撃力・・・
まだ慣れていない様子は捉えられるが、彼女も選ばれたという事か・・・。
対する、玉藻前さんも前回よりも飛躍的に進化を見せていた。
玉藻前「調子にのってんじゃないわよ!!」
溢れんばかりの怒りをフェイにぶつけながら、剣を構える。
その左腕は、もう再生をはじめていた。
ブリジット「・・・やはり、な」
彼女も、能力になれてきているという事か。
それは紛れも無い、選ばれたという証拠。
まったくもって、貴方達は・・・。

フェイ「殺すわ」
その言葉が、戦闘の合図となった。
玉藻前「ツーハンドクイッケン!!」
フェイ「ソニックブロウ!!」
格段とスピードのあがった玉藻前の剣が、同じくスピードの上がったフェイの一撃一撃を剣で押さえていく。
フェイが止まったのと同時に、大きく剣を振り上げる。
玉藻前「ボーリングバッシュ!!」
その一撃を、体を飛ばして回避する。
上から、玉藻前の頭を貫かんとする深紅のカタール。
下から、向かってくる目標目掛けて突き出される2HS。

まったくもって、貴方方は・・・
ブリジット(ここで死なれては困るんですよ)
咄嗟に前方に走り出し、両者の武器の間を裂くように剣を挟みいれる。
ブリジット「は〜い、ストップ」
そう、場に似つかない声で二人の戦闘を止める。
フェイ「邪魔しないで」
自分の剣に弾かれたフェイは、その流れに身を任せて距離を置く。
玉藻前も、自分のプレートに思いっきり蹴りをいれてその反動で距離を取っていた。
ブリジット「ここは引きなさい」
そう、玉藻前に軽く、そしてやわらかく声をかける。
ブリジット「貴方方にはこんな所で殺しあっちゃ困るんですよ」
そう、こちらにも色々と事情というものがあるのだ。
玉藻前「何をッ!」
そんな何かを見透かしたかのような自分が気に食わないのか、吐き捨てるかのように大きな声で怒鳴りつける。
フェイに切られた事が、予想の他効果がでかいらしい。
・・・仕方が無い。
ブリジット「それとも・・・」


にっこりと、先ほどから絶やさずしている微笑は崩さない。
されど、彼女を威圧する程には十分すぎる程の殺気をダイレクトでぶつける。
ブリジット「私達二人を相手にして勝てるとでも?」
玉藻前「・・・」
彼女の体が、一瞬止まる。
表面にこそ出しはしないが、さて・・・。
玉藻前「覚えてなさい」
そう捨て台詞を吐いて、走り去っていく。
その姿を、後ろから静かに見つめる。
ブリジット「ふむ、賢明な判断です」
そしてゆっくりと後ろを振り返る。
そこには、力を使い果たし倒れるフェイの姿があった。
ブリジット「ぶっ!フェイさん!!」
慌てて駆け寄って見てみるが、命にまでは別状が無い様子である。
まぁ、しかし・・・
ブリジット「いや、あの状態から動けただけでも・・・」
そう呟く自分の後ろに、視線を明後日の方向に向けつつ時が立っている。
その顔は、いつも以上に赤く感じる。
時「あー、こほん。いつまで見ているのですか?」
・・・?
ブリジット「ん?ああっ!」
一瞬何が言いたいのかわからなかったが、再度前を見て言いたい事が一瞬でわかった。
咄嗟に顔を横に向けて、照れ隠しに笑ってみせる。
ブリジット「とりあえず、モロクに戻りましょう」
自分のマントをゆっくりとフェイに羽織らせながら、時は蝶の羽を地面に落とした。



ブリジット「時さん、少し休んだ方がいいよ」
酒場の宿の二階。
薄暗い部屋の中に、一人寂しそうに佇む時にそう声をかける。
しかし、聞こえているのか聞こえていないのか、時は一向に動く気配を見せない。
彼も、強情だなぁ・・・
その彼女を大切に思う一途さ故に、彼は動かなかった。
時は、もう三日もこの場所でこうして一人ずっと座っている。
その目の前のベットで寝ている、フェイの起きる瞬間を見る為に。
その様子を、静かに見つめながら、その部屋を後にした。


アルテナ「どうだった?」
二階から降りてきた自分に、アルテナが心配そうに声をかけてくる。
だめだった、という意思表示をしながらゆっくりとカウンターに腰掛ける。
彼女の手には、少々強めのお酒が握られていた。
アルテナ「そう」
寂しげにそう答えながら、手にしたお酒を一気に飲み干す。
アルテナ「このままじゃ、あいつが倒れちまうよ」
苛立たしげに、酒の入ったコップをゆっくり揺らす。
彼女は、限界を超えても尚戦闘を行なってしまった。
たとえどんな強靭な能力を手に入れようとも、平常な体が、精神がついて行くというのは実際別問題にあたるのだ。

それが、傷ついた体が瞬時に再生しようとも。
どんな人間離れした、能力を持とうとも。

根本的な所にある、「人間」という名のリミッタ―を彼女達は絶対に外す事は出来ない。

彼女がこれだけ目を覚まさない理由が、それに当たる。
・・・。
ブリジット「フェイさんが早く目覚めてくれるといいんですけどね」
簡単だが、今に一番の言葉をアルテナにぶつける。
その答えは、返ってこない。
目の前にだされた、緑茶を、ゆっくりと口をつける。
ブリジット「そういやカタリナは?」
アルテナ「ちょっと、野暮用で出てるわ」
明日には帰ってくるわよ、という付け言葉をあわせて。
彼女は、笑って見せた。



次の朝。
眠い頭を叩きながら、辺りを見渡す。
ブリジット「・・・あれ」
いつもとはあきらかに違う状況。
鈴が布団に潜ってきていない。
今日は矢でも降ってきそうだ。
さらに、いつも起こしてくれるヤファすら見当たらない。
ブリジット「・・・全世界でメテオストームという名の雨が降るでしょう」
・・・。
ブリジット「おかしいなぁ」
いつもとは違う状況に目が覚めてしまい、ゆっくりといつもの服装に着替えて下に下りていく。


アルテナ「相変わらず、貴方は寝癖がすごいわね」
ぼけーっとしながら下に下りてきた自分をまず向かえてくれたのは、アルテナの指摘。
言われてから頭をさわってみると、本日も見事なくらい豪勢な寝癖だった。
ブリジット「あー・・・あれなんですよ、ヤファ達を見ませんでしたか?」
忘れかけていた言葉を何とか思い出し、そう問い掛ける。
カタリナ「時さんと一緒に、フェイヨンの方にある草原で花摘みアルー!とか言ってたけど」
騒がしいムナックがね、と笑いながら付け加えてくれた。
はて、あのような場所に一体何を・・・?
そう思いながら、ゆっくりと椅子に腰掛ける。
カタリナ「・・・そこ、椅子は横、そこはテーブル」
ブリジット「・・・ありゃ、これは失敬」



ブリジット「・・・ほぅ」
その光景を見た自分の始めにでた言葉は、それであった。

ヤファ「ほらほら、時さん、そこ結び方が違いますよぉ」
時「む…」
そう指摘されて、慣れない作業を何とかこなそうと奮闘する時。
鈴「まったく、時は不器用アルね〜」
ヤファ「わぁ、鈴さん上手です〜」
そんな時を見ながら、慣れた手つきで完成させ、ふんと軽く誇ってみせる鈴。
時刻は丁度昼頃。
爽やかな日差しがさしてくる中、三人はせっせと花を集めては編んでいる。
少々不釣合いな状況ながらも、奮闘する時を見て少し笑みがこぼれる。
ブリジット「ヤファもやってくれますね〜」
昨日、何やら1階で緑茶を飲んでいる時に何やら声が聞こえたと思ったら。
成る程、という所か。
時の表情が、見違えるほどに明るい。
ブリジット「立ち直ってくれましたか」
立ち直らせたのは、鈴とヤファのおかげか。
彼女達に感謝しなくてはな。
そう、表情に笑みを浮かべていた自分の表情を瞬時に険しくさせる。


ブリジット「出てきたらどうです」
その言葉に乗せるように、後ろの大木に向けて殺気をぶつける。
大木が揺れて、木の葉がゆらゆらと舞い落ちる。
「やぁね、そんなに殺気立たなくていいじゃない」
顔こそ見えずとも、その声は自分がよく知る声であった。
深緑の髪を、軽くかきあげる。
ブリジット「あの禁術、やはりあなたの仕業でしたか」
率直な言葉を、その人物にぶつける。
どういうつもりなのか。
その行動の本位が知りたかった。
「そうよ」
軽く、されど重みのある言葉が返ってくる。
ブリジット「どういうつもりですか?彼女には干渉しない約束だったはず」
当初は、そういう約束で了承をした。
これは、明らかな契約違反。
「私もそのつもりだったんだけどね〜、そうも言ってられなくなって」
そんな自分の考えとは裏腹に、悪切れもないような素振りの返答が返ってきた。
・・・どういう、つもりなのか。
再度、自分の中で問い掛ける。
ブリジット「そんなことが許されるとでも・・・」
咄嗟に、腰につけていた護身用の片手剣を抜こうとした時だった。
突如、一人の少女が自分の背後から現れ、自分に向けて攻撃を加える。


「破ッ!!」
一際大きな音を、プレートがたてる。
ブリジット「くっ!」
咄嗟に前に飛びのき、その勢いを押し殺す。
ブリジット(プレートが、いっちゃいましたね)
冷や冷やする自分を尻目に、その影は自分から距離を取る。
「灯子、戻ってきなさい」
その言葉と共に、前方にいる人物の方に素早く戻っていく。
「あんたの所の王が何を考えているか、調べてみることね」
・・・王。
首都プロンテアを統治する、この世界で一番地位が高いとされる王。
だかしかし、何故ここでいきなり彼の名が?
ブリジット「何を・・・」
何か引っかかる物がなかった訳ではない。
ただ、されどそう問いかけずにはいられなかった。
戸惑いを見せる自分に笑みを軽く浮かべる。
「もう戦いは始まっているのよ」
その言葉と同時に、彼女達は光の中に消えていった。
ブリジット「やっかいなことになりそうですねぇ」
そう、壊れたプレートを見つめながら呟いた。


そんな自分に追い討ちをかけるかのように、一人の女性からWISが飛んでくる。
ブリジット「はい、何でしょうか?」



・・・。
プレートの金属音が、静かなこの空間で鳴り響く。
体には、返り血のおかげで真っ赤になっていた。
プレートの銀色の色に反映するかのように、血が滴り落ちる。

背負う物を、一つ捨てた。
何かを得る為には、何かを代価として払わねばいけない。
その言葉どおり、大事な物を一つ捨てた。
それ故に・・・


「・・・よく来たな、ブリジット」

プロンテア城の大広間。
目の前には、この国を統治する王が座って自分を見つめていた。
不意に、口元を少しだけ開けて笑っている自分がいるのに気がついた。
笑いが止まらない。
・・・どうも、たまに起きるこの衝動は押さえ切れませんね。
ブリジット「・・・話を聞かせてもらいましょうか。事と次第によっては」
そういって、背中にある黒い、禍々しいオーラを放つ漆黒の両手剣を抜く。
その剣も、先ほどまで生きていた者の血を滴り落としている。
ポタポタと、静かなこの空間に水音が響き渡る。
ブリジット「貴方達を、殺します」



つづく




〜あとがき〜
いかがお過ごしでしょうか?ブリジットです。
今回で、ようやく魔剣編が終わりを告げました。
これからは、ようやくイング達の視線に変わると思われです。

今回は、それに伴い少々謎かけのような所をちまちまと出してみました。
この謎は、最後にいくにつれどんどん解っていく仕組みです(当たり前
興味をもたれたお方は、ぜひ御付き合い下さいませ。

ただ、もう今一ROの原型とどめていないのは仕様なので許してあげてください(ぁ

ついでといっちゃなんですが、番外編を一つ予定しております。
空白の間の、追加なお話。
そう、エクストラステージ。

#違

ちまっと更新するので、よろしければ見てやって下さいな〜。
それでは♪
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