ラグナロク・オリジナルストーリー第参話―旅立ち


イング「たぁっ!!」
ズバッ、という切り裂かれる音と共にウルフが声も上げずに倒れた。
ブリジット「ふぅ・・・どうだろう、大体こんなもんで剣士になれる経験は積めたと思うよ。・・・ちょっと休憩しよっか!」
イングはまだ初心者の「ノービス」と呼ばれている職業で、すぐ息が上がってしまう。
さらに、本来ノービスでは手を出さないウルフなどを中心に戦っている。
今イングはかなり疲れている事だろう。
近くの木陰を探し、見つけるなりそこに倒れこむように座るイング。
後からゆっくりとブリジットも座る。
イング「確か・・・イズルートの街に行って剣士ギルトにいけば僕は剣士になれるんですよね?」
その問いかけに対し、ブリジットは小さく頷く。
イズルートとはプロンテアの近くにある港町のようなもので、船で街やダンジョンへ行く事ができる所である。
そこに剣士ギルトは存在しているのだ。
ブリジット「もう行けば成れると思うよ。その前にイング、君に一つ言っておきたい事があるんだよ。」
その場の雰囲気が、最期の言葉辺りより変わってきた。
なんというか、何か重く、息苦しいといった感じだろうか。
小さく息を飲んで、ゆっくりと頷く。



ブリジット「君はこれからさまざまな人に出会うと思うんだ。当然嫌な奴もいるだろうし、良い奴にも会うと思う」
立て続けに、続きを話し始める。
ブリジット「本当に信頼できる仲間を見つけたら、その仲間を見捨てたり、裏切る行為は絶対しないでほしい。」
珍しくブリジットらしからぬ真面目な発言に、一瞬戸惑いを見せる。
しかし、すぐ顔つきが変わり、はっきりとした口調で「はい!」と大声で返事をした。
その返事がすぐ返ってきたのに対し、ブリジットはにこっと笑う。
その後イングはそろそろ剣士になるという事で別れが近くなってるせいか、彼より様々なアイテムを渡されていた。
ブリジット「これは蝶の羽といってね、カプラさんと最期話してセーブした所に飛んでいけるという優れものなんだ。めんどくさい時に使うといいよっ。」
上機嫌で最期のアイテムと思われる蝶の羽を渡される。
初めてみるアイテムだ・・・無論使った事がない。
イング「ブリジットさん、これどうやって使うんですか・・・?」
様々な試みをしたがまったく反応すらしないのだ。
もぅ聞く以外手が無い、といった感じである。
ブリジット「これはね、何か呪いの一種だっけなぁ・・・みたいのが付いていてね、念じる事によって羽が消滅してワープできる、という原理なんだよ。」
そういうとイングは表情を明るくさせ、念じてみる事にした。
ブリジット「でも今使う必要はないよ〜、位置的に剣士ギルトは歩いていった方が近いしね、休みおわったら・・・ってあ!!」
遅かった。
え?という声と共にイングは先程出たモロクの方へワープしてしまった。
泣く泣く、後を追うように蝶の羽を使うブリジット。
ブリジット「不覚っ、そりゃ説明されれば使うよねぇ・・・うぅ、一次職になって戻るって提案したのは私だぞ、どう説明するんだよ・・・」
こういうのを嘆きというのだろう。
ブリジットの嘆きは、悲しく砂漠にこだまするだけであった・・・。



イングが目をあけると先程後にした街モロクについていた。
振り向くと後ろからまぶしい光が発せられ、ブリジットが中より姿をあらわした。
イング「す、すみません・・・」
下を向いて、しゅんとなりながら謝るイング。それに対し顔の前で手を振るブリジット。
ブリジット「いやいや、私がついつい使いたくなるような事いっちゃったからね。そいや時さん達はいるかな・・・中央の泉いってみようか!」
そういうなり、ゆっくりと二人は中央の泉へと向かうのであった。



中央泉の方では、時が不機嫌そうに壁によりかかっていた。
時「・・・まったくブリジット殿達は一体どれだけかかるのだ」
そう言っている前の方で、アリスはずっと泉の所で待っていたユキと話で盛り上がっていた。
これが時の機嫌の悪さを加速させる原因である。
時はうるさい事があまり好きではなかった。
というより、慣れていないといった方が正しいかもしれない。
当然女性同士の話し合いなんぞ、そんな時にとってやかましい存在以外の何でもない。
そんな彼が、何故あのブリジットとギルトを共にしてるのかも謎である。
しかし、アリスは時にとってとても接しやすかった。
印象は、明るくて元気で話好きな当たりのよい女性。
まさかと思ったが、雰囲気がブリジットと似てるかもしれない。


そう思ってた時、不意にブリジットがいってた「気をつけてくれ」という発言を思い出した。
その言葉に対し苦笑する時。
時「さすがに今回の予感ははずれだろうな。しかしあの方が予想が外すのも珍しいもんだ・・・。」
そう呟くとなり、ユキ達といたペコペコが急に前の方へ走り出した。
その場面にびっくりするアリスとユキ。
ユキ「えっ・・・!ちょっとまって!お願いだからとまってよ〜〜!」
アリス「いけない・・・おいかけましょう、ユキさん!!」
そういって即座に立つユキとアリス。
といっても人間が追いかけて追いつくスピードでは無い。
正直追いつく可能性は低かった。
ブリジット「・・・っとと、その必要はないよ〜〜。皆おまたせ!」
そういって、ペコペコと一緒に戻ってきたのはブリジットとイングであった。
二人の方へ、ゆっくりと近づいていく。
近くまで戻ってくるなり、ブリジットはユキの前に向かっていった。
ブリジット「うん、ちゃんと約束守ってくれてたようだね、ありがとう、待っててくれて!」
そういうとなりユキの頭を撫でるブリジット。
ユキ「えへへ・・・ん?ってまた子供扱いしたわねぇ〜!?何度も言いますけど私これでも18なのよ!?1 8 歳!!わかる!?」
ブリジット「にゃはは、まぁまぁ、約束守ってくれた事が嬉しいからこういう事してるんだ、今回は流してよ〜、ね?」
そういうとユキはもぅ!といってそっぽを向いてしまった。
しかし表情はまんざらでもない、といった感じである。



その場面を見ていた時が、ブリジットの方へ近づいてきた。
時「ブリジット殿、こちらはアリス殿をアコライトにまで転職させる事に成功した。あと言われた通り多少アイテムなどを渡しておいた。」
ブリジットが「あり〜」と時に一言声をかけ、アリスの近くまで向かってきた。
しかし、声を先に発したのはアリスの方であった。
アリス「私、やっとアコライトになれました!これもブリジットさんと時さんのおかげです、ありがとうございました!」
そう言うなり、ブリジットと時に向かって行儀よくお辞儀をする。
二人ともお辞儀をしかえす。お辞儀をし終わるとなり、アリスはイングの方に顔を向けた。
アリス「どうイング?これが新しくなったアコライトの服なの!かわいいでしょ〜?」
そう言いながら、イングの目の前で一回転する。
どうやらやっとなれたためか、とても上機嫌のようだ。
イング「うん、とっても似合ってるよ。へぇ・・・それがアコライトの服なんだ」
実際よく見てきたものの、やはり知り合いがなると何か雰囲気が違う。
その話で盛り上がってる最中、時がブリジットに疑いの視線を向ける。
時「どうみてもイング殿が剣士の姿ではないのだが・・・まさかまだ転職してないのではないだろうな?」
ぎくっ。と言った感じでブリジットの顔が引きつる。
まったく、この人は毎度毎度こうやって何か問題引っさげて帰ってくる・・・。
こほん、と一声だしてからブリジットが皆に向かってしゃべり始めた。
ブリジット「さて、見ての通りイングはまだ剣士になってません・・・ごめん。てな訳でポタ屋さん探してイズルートに向かうよ!いいね!」
ポタ屋とは、アコライトなどがワープポータルで街などに飛ばしてくれる、簡単にいえば転送屋である。
昔は転送屋がちゃんといたのだが、どうやらいなくなってしまったらしい。
ブリジットを除く全員が了解、という返答を出した。


その後五人はポタ屋を見つけ、イズルートまで飛ばしてもらう事になった。
そのポタ屋は男のアコライトで、後ろに盗賊と剣士の男がいた。察するに、多分仲間であろう。
男アコ「了解致しました。それでは良い旅を〜」
そう言うと五人はまばゆい光につつまれ、その姿を消した。
・・・その後交わされた言葉を聞かずに。
男アコ「今度はあいつらでどうだ?あの二人の上級職の奴等さえいなくなればいけるはずだ」
男盗賊「さっき泉の方で剣士になったら別れるとかいってた・・・いけるぞ」
男剣士「決まりだな。俺等は歩いてイズルートに向かうか・・・くっくっく、またこうも簡単にまた見つかるとはな」
そう言うとなり、三人はモロク北口の方へ歩いていった。
無論イング達はこの会話を知らない。



イズルートにつくなり、ユキは歓喜極まった声を発した。
ユキ「ここがイズルートかぁ・・・うわぁすごい・・・剣士も沢山いるわね!」
その言葉に多少疑問を持ったのか、イングがユキに対し質問を投げかける。
イング「・・・?剣士なんかあんまし珍しくないじゃないですか、どうしてそんなに珍しいような目で見るんですか?」
質問を聞いた後、感動しているユキに変わってアリスが答えてくれた。
アリス「どうやらユキさんが生まれた"ゲフェン"にあんまし剣士とかがいなかったんですって。私だって珍しそうな目で見られたのよ?」
そう言い、少し笑う。


・・・ゲフェンは別名魔法都市と言われてる街である。
確かに、プロンテアなどから少し離れた位置に存在している。
ブリジット「はいはい、すまないが話一旦中止な!イング、君は剣士ギルトに早くいってこい!ちゃんとなってから出てきなよ!」
そういうとイングをどん、と押すブリジット。
押されたと共に頑張ってね!とアリスがエールを送る。
イング「はい。・・・ではいってきますね!」
そう言い残し、イングは剣士ギルトの中へ入っていった・・・



剣士ギルト員「お、新しい剣士志望の方かな?まずはここの必要な部分に記入してくれ。」
入るとなり、すぐさま少々年のいった男ににそう促される。
焦らず、落ち着いて用紙に記入する。
剣士ギルト員「ん、名前はイング君・・・うん、どうやら条件もしっかりクリアーしてるみたいだな。」
そういうとなり、剣士の服装が手渡された。
そして、その男は指で横の部屋をびしっと指差す。
・・・そうやら、着替えて来いという意味のようだ。
ならば早速、といわんばかりに部屋に急ぎ足で向かった・・・。



剣士ギルト員「ん、着替え終わったようだな・・・最期に君に質問させてもらう。これは別に流してもらっても構わないがな」
その問いかけに対しはいっ、と答えるイング。
剣士ギルト員「君にとって剣士とは・・・どのように在るべきだと思う?」
直球的な質問に、一瞬言葉が詰まってしまう。
すると先程ブリジットに言われた"あの言葉"を思い出した・・・うん、と心の中で頷き、その質問に答える。
イング「僕は・・・冒険を始めて仲間が出来ました。その存在を守っていけるようになりたい。うん、仲間守るために在るべきだと思います。」
そう、言いきるイング。 彼の目に、迷いはない。
すると、そのギルト員は急に大きな声で笑い出した。
剣士ギルト員「こんな時期に珍しい・・・欲のみで動く奴等とはかなり違った奴みたいだな・・・気に入った!」
そういって一息いれるとなりこうイングに言い放つ。
剣士ギルト員「君の意思、しかとききとげた!胸を張って剣士として生きていくがよい!!剣士イングに神のご加護があらん事を!!」
そういうと剣士ギルト員より選別だ、受け取れ!といわれ一枚のカードを貰った。
ギルト員が物をあげるなんぞ前例のない話である。
イング「ありがとうございます・・・それでは!」
そういうと、後ろを振り返り来た道の方へ走っていく。
剣士ギルト員「つい渡しちまったな・・・ああいう素直な奴がこの世界で増えていくといいのだがな・・・時代が変わりすぎちまったか。」
そういうなり、ギルト員はもっていた煙草をふかす。
誰もいなくなった、静かな剣士ギルトの中で。



その後四人より祝いの言葉を受け、ブリジットの餞別ということで三人の装備を新調させてもらった。
少々高すぎる買い物をしすぎた気もするが、彼の押しに負けてついつい色々買い揃える形となった。
彼は、もしかしたら金持ちなのだろうか?
そんな言葉を、ふとイングはもらしていた。


買い物が終わり、イズルートの入り口に到着した頃。
ブリジットが、不意にユキに対し質問の言葉をなげかけた。
ブリジット「ユキさん、君はまだ私のギルトに入ろうとしているのかい?」
その質問に対し当然よ!!と胸を張って答えるユキ。
その答えに、小さく、軽く頷くブリジット。
ブリジット「・・・わかった、君を我がギルトへと迎え入れよう」
その発言にユキの「やったぁ!!」という声と共に時が「なにぃ!!」という信じられないといった声を上げる。
そんな声をよそに、さっさと話を進める。


ブリジット「それではギルトマスターブリジットより新たなギルトメンバー、ユキに命令である!
      この二人、アリスとイングに付いて行き己の力を高める事!以上だ!」
その発言に、一同が一瞬にして声を失ってしまっう。
その沈黙の中、時は納得、といった表情。他の三人はまだ状況が飲み込めていないようだ。
沈黙を、まず破ったのはユキ。
ユキ「え・・・どうしてよっ!なんでブリジット達といっちゃいけないの!?」
そう、ブリジットにくってかかる。
ブリジット「命令はしたくないんだけど・・・私達と一緒はとても危険なんだ。わざわざ君を危険な目にあわす訳にはいかない」
ユキ「そ、そんな・・・!一緒に行けないなんてそんなのギルトメンバーじゃないわよっ!」
少し半泣き状態で言い返す。
しかし、彼の表情に揺らぎはなかった。


ブリジット「にゃはは、安心しなって・・・ほらこれ、これをもっていれば私のギルトメンバーさ。それにちょくちょく顔だすさ。」
そういうとユキにエンぺリウムの欠片がついたアクセサリーを渡す。
きらきら輝く、宝石みたいな印象が強かった。
ブリジット「イング、アリス。ユキは必ず君達のパーティーで活躍するはずだ。勢いみたいですまないんだが、ユキの事頼めるかな?」
そういうと、二人が顔を見合わせる。
不安そうに二人の様子を伺うユキ・・・といっても、この時にはもう二人の答えは決まっていたのだ。
アリス「ユキ、私達からもお願いするよ!一緒にパーティー組まない?」
その言葉に強張っていた顔が急にふにゃっ、と崩れた。
解りやすいくらいの、安堵の表れだろう。
ユキ「うん!あの・・・その・・・これからよろしくねっ!」
そう言うなり、ブリジットと時は打ち解けたな・・・といった安心した顔でいた。
すると、急にユキがブリジットの方へ向いた。
ユキ「ブリジット!ちゃんと定期的にこのPTを見にくるのよっ!ギルトメンバーの調子を気遣うのもギルトマスターの勤めよねっ!」
その発言に笑って「わかったわかった」と答えるブリジット。
「絶対よ!」とユキが念押ししていた。


とうとうイング率いるPTの出発の時である。
「それでは、」と言い残しブリジットと時を背に向け三人は歩き出した。


するとすぐ後ろで大きな声が聞こえた・・・声の主はブリジットであった。
ブリジット「これから大変だろうけど、がぬばれよ〜!・・・死ぬんじゃないぞっ」
そういうとブリジットと時はこれより旅立っていく新たな"冒険者"に敬礼をしていた。
・・・三人の姿が確認できなくなるまで。
時「平気ですかなあの三人・・・生き残っていけるか幾分心配だな」
ブリジット「珍しい、時さんが心配するなんて・・・まぁすごく心配なんだけど、私が付いていっては意味がないんだよ。
      彼等の無事を祈るしかないよ、私達には。」
そう、他愛もない会話をする二人。
時「しかし・・・どうですかな、"奴等"にでも出会ったら彼等じゃ太刀打ちできないだろうし・・・」
ブリジット「わかっている・・・といってもあいつ等もそんな暇じゃないはずだし、今は会わない事を祈るのみさ・・・さて、街に戻ろう。」
そういうと、二人は街の方へ歩いていく。
しかし、その街へ向かっていく姿を確認する三人がいた。
先程のアコライトを筆頭にいた三人である。
男剣士「よしいったな・・・気付いてねぇみたいだし、あいつ等がいねぇならもぅ楽勝だな。見失わないように早く追いかけるぞ!」
そういうと三人は先程イング達が向かった方へ走っていった。


イング達は気づいていない。






自分達が"狩られる"対象になっている事を。




つづく

〜あとがき〜
こんちわ、ブリジットです。まいど皆様このラグナロク小説、ご愛読いただきありがとうございます〜。
さて順調に第参話とまできました。・・・予定として随分内容遅れているのですがね(苦笑
ひとまず前回登場しました新しいキャラユキもイング達と冒険する、という答えにたどり着きました。・・・今後どうなることやら(汗
じ・・・次回はちょっとダークに・・・いくかもしれないしいかないかもしれない(汗
今後の発展、どうぞご期待下さいませ〜。それでは♪


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