世界、それは無数に存在ししかし限りのある世界。
その世界、意味ある者が居る限り存在する。
その世界、意味あるものが消えない限り消えはしない。

世界を統括せし者、その12の者にその力を托す。
力を手にし者、すべてを超越し、この世界に君臨せん。
神の代行人として、この世界に君臨せん。

力を手にし者、人を超越し力を手にせん。
その力、魔族とて到底及ばず。
その力、絶対無比にして絶対的な存在也。

神に戦いを仕掛けてはいけない。
世界に戦いを挑んではいけない。
この世界を、求めてはいけない。
力を、知ってはいけない。
知り、進む先には闇しかないのだから。
進んだ先には、貴方が永遠に眠る世界しかないのだから。

それでも進むのなら、私を追うといい。
世界を求める者の前に、私は現れる。
神を求める者の前に、私は存在し続ける。

私は存在しつづけよう、貴方が居る限り。
力を求め、世界を知ろうとする貴方に。
闇があろうとも、恐れぬ貴方の為に。

闇を恐れぬ者よ、私を追いなさい。
眠りを恐れぬ者よ、私を求めなさい。
私の全てを知るとき、貴方の前には神が降りる事だろう。

神の世界を、神の領域を見れるだろう。


ラグナロク・オリジナルストーリー第参壱拾参話―伝承




カタリナ「いいの?貴方の持つ歴史の情報は世界でも五本指に入るくらいのシークレット情報じゃ・・・」
心配そうな表情を浮かべながら、閑散とした酒場の中を見る。
モンスターは撃退したとしても酒場の復旧には流石に時間を要す。
このような状況では流石に再開まで時間が必要とみたカタリナのこの酒場の入り口には、「CLOSE」の文字があった。
シレウス「仕方がないだろう、旦那を追うというにはこれが一番早い。旦那を追うとは、そういうことだよ」
カラン、と氷の溶ける音が静かに響く。

先ほど、旦那・・・ブリジットを求めて早速にも外に出て行くと威勢良く足を進めた三人に、古い付き合いからの良きアドバイスを与えた。
まぁ、古い付き合いってのはとっても個人的にそう思っているだけなので流して欲しい。
・・・で、その情報なのだが・・・俺が過去集めた歴史の一部である。
無論、俺の歴史の情報は他言無用の貴重な情報の部類に入る。
カタリナも言っていたが、世界で五本指に入るというのは中々どうして冗談ではないのだ。
今回の件で俺の中で確信に変わったのは一つ。

まず一つに、禁術を知りたければ旦那に近づくのが手っ取り早いという事。
禁術と所持すると思われる二格と旦那の接触・・・これは非常に大きな収穫といえよう。
さらに、イング達の話からしても旦那はその禁術の名前までも知っていた・・・
前からそりゃ人間離れした話を良く聞いてはいたが、よもやここまで大きな存在だったとは・・・

そして二つ目・・・こちらは、俺の予想の話だ。
この残された歴史に、旦那は関与しているのではないかという事。
禁術のことをちらちらと見せる歴史に、その禁術の名前を知っている旦那。
つまり、旦那は重要なキーワードとして存在する者では?という事だ。

しかしこれの場合、かなりの問題が存在する。
その場合、旦那はそれは気の遠くなる時間を生きているという事になってしまうのだ。
少なくとも数百年・・・もしかしたら、数千年という時間を生きている事となる。
しかし、万が一だ、万が一「時」を味方につけれるような禁術があったとすれば・・・?

しかしその反面、それにしては幼い一面を旦那は見せる。
精神的に脆い部分も良く現れ、今回の敗因はそこだと見れる。
そんな旦那が、数千年も生きていられるのだろうか?

違う、そんな表現では些か微妙だ。
そう、そもそも人の精神が数千年という永い・・・永い永い年月に耐えうるものなのだろうか?
人の寿命はせいぜい頑張ったとしても100〜150程度だろう。
人は老いていくと同時に精神的な面も弱くなり、そして体も弱っていく。
たとえ万が一「時」が味方し後者を克服できたとしても、果たして人間が前者の精神面をクリアーできるのだろうか。

いや、俺は出来ないと予想する。
俺だって生きていたいと願う生物元来の欲求の一つくらいそりゃ当然に持ち合わせている。
しかしそれはあくまで人間での話。
数百・・・数千も、気が遠くなるほど生き長らえたいとは思わない。
歴史を追う所か、それでは自分が歴史を語る方となってしまうだろうから。


ああ、そういえばまだ気になる点があった・・・。
シレウス「話によれば、旦那の雰囲気が変わった時旦那は喋ってたんだよな?普通に」
カタリナ「らしい・・・わね、中途半端だったのかしら」
どうやらこの点に関してはカタリナも自分と同じ疑問を抱いているようだ。
そう・・・
旦那の雰囲気の変化に、疑問を抱いているのだ。


どうやら旦那は感情の起伏によって少し性格が飛ぶ性質を持つらしい。
類として見るのならば、普段温厚な奴が武器を持つ途端異常なまでの殺人マシーンに化してしまうような・・・
これはちょっと例として出すには微妙かもしれないが、似たような点があると俺は分析する。

つまり、旦那は普段のあの呆けた性格以外に顔を持ち合わせている、ということだ。
現にイング達の話では、まるで人が変わったような・・・そんな感じがあったらしい。

過去でなら、旦那が旦那でなくなったあの話がある。
そう、騎士団・・・魔道士達・・・そして聖職者達と暗殺者達を切り刻んだあの忌わしい事件だ。

裏の話を知っている俺からすれば、旦那の介入がなければまずもっと大きくなり・・・大量の死者が出ただろう。
戦場に出る以上、誰だって死程度は覚悟しているはず。
その戦い、生き抜く術を持つ者たちが死ぬという点に関しては、俺はなんとも思わない。

戦争になれば、その術を持たない者達・・・そして、弱者が優先的に死んでいく。
仕方がないことだと思いながらも、こうして弱い者を有無言わさず巻き込んでいく戦争は俺は嫌いだ。

そういった面では、俺は旦那に多大なる感謝はしているつもりだ。
これがなければ、あの「死神」と呼ばれた旦那に近づこうとさえ思わなかっただろう。

そう、見る者から見れば旦那の行為は「戦争を回避した」唯一の行為だったのだ。
あの時旦那がいなければ、この戦いは泥沼化し世界は今尚戦争真っ只中だっただろう。
しかしながら、そういう目で見る者はほとんどいない。
まぁ、確かに見ろって言う方が無理に聞こえなくもないが・・・

ご存知の通り、あの日旦那はそりゃ大量の死者を出させたで有名だ。
もはや人間業ではない・・・あれはまさに、死を運ぶ「死神」の姿であったと。

イング達は知らなかったようだが、旦那にはもう一つの呼び名が存在する。
生き残りの話を聞いているせいか、この話を知っているとイングは言った。
ならば聞いたのだろうか?
旦那は、狂うように笑い、そして愉しみながら人を殺していたという事を。
時には首だけを持ちその顔をその仲間に見せ、その表情を楽しんでいたと聞く。
また、切り刻んだその体を遊ぶように、さらに細かく切り刻んだと。
その場に居る者達に、永劫消えることのないであろう苦痛を・・・恐怖を。
まるで見せるように動いたその姿は、まるで劇の注目を浴びる「道化師」のようであったと。
道化師は、今日もまた返り血に体を真っ赤に染めて笑う。

「キ・・・キヒヒ、キヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!」

カタリナ「・・・あんたも、なんだかんだいって当事者みたいなもんだしねぇ」
シレウス「まぁ・・・な」
時たま頭の中に流れるこの笑い声は、俺の耳から離れる事はないだろう。

あの時、俺は参加こそしていなかったがたまたまその戦闘に参加すると言っていた奴にWISをつけた。
簡単に言えば盗聴目当てでつけたのだが・・・。
当時から歴史を追っていた俺だが、反面あのような賞金首を扱う場も営んでいる。
そういった面から、今回のこの大規模な戦闘は俺としても見逃せない立場にいたのだ。
どちらかが勝つかで、この世界の秩序は大きく塗り替えられる。
その歴史の当事者になろうと、俺はWISから送られてくる一つ一つをそれは慎重に聞き入った。

するとどうだろう、いきなりWISから送られてくるのが酷く雑音のみとなってしまったのだ。
これは何の音だろう?
判らない、このような音がこの世界に存在するのだろうか?
シレウス「・・・!?」
いや違う、これは・・・!?

WISから聞こえてくる物が初めは判断できなかったが、少し経ちようやく確信する。
これは・・・悲鳴?
普段自分達が耳にする悲鳴とはまったく違う物で、こんなものが人間の口から発せられるのかと疑うほどのものだった。
幾多ものその声は重なり重なり、一つの大きな悲鳴の渦となっていく。
俺は聞き入った、それをただ無心に貪るように。
悲鳴が一つ、また一つと消えていく。
大きな悲鳴の合奏は段々と歌う者が減っていき、渦は段々と小さくなっていく。
「あぁぁぁあああ!」
大きな声と同時に、何かを切り裂く音が聞こえる。
どうやらWISをつけた者が、敵対している何かに攻撃を加えたようだ。
「無意味・・・無意味無意味無意味!だがその恐怖に歪んだ表情は素晴らしいものだ・・・褒美として苦しむ事なく逝かせて差上げよう」
「あぐっ・・・!」
ポキン、という音と同時に、その者が発する事はなくなった。

「キ・・・キヒヒ、キヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!何と弱き生き物かな、人間というものは」

息が出来ないほどの恐怖が、俺を襲った。
なんだ、これが行われているのはWISの先・・・この場とはかけ離れた位置で行われているもの。
それなのに、この体を締め付けてたまらないこの恐怖感はなんだ。
敵は、このWISからでさえ判る程の殺気を放っているという事なのだろうか?

「弱き者が死ニ、強き者ガ生き残る嗚呼コれ即ちこノ世の原理!弱キ物時を経テ強き物に対抗すル術を持ち立場反転スるこレも即ちコの世の原理!
 嗚呼だガ術を持タぬ内に強者に出会ウこレ即チ死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!」


バキン!
気づかれていたのか、それとも気づかれていないのか?
どちらにせよ、WISはどうやら壊されたようで、これ以上の状況をWISが送る事はなかった。

シレウス「・・・旦那を追う事は、容易じゃないぞ・・・イング、アリス、ユキ」

彼等は純粋、故に強く、脆い。
彼等のような存在が、あの時の旦那に出会ってしまったらどうしてやれよう。
だが彼等は、それでも旦那を追うといった。
ならば、俺は最大限の助け舟を出してあげよう。

旦那を、感謝しつつも恐れる自分がいる。
それは俺が死ぬまで変わる事はないだろう。
死神という名の道化師が、俺のこの心の中から消えない限り。

旦那の本当の姿は、一体どれなのだろうか?



アリス「フェイヨンに行きましょう」
フェイヨン。
他の街とは異なり、独創的な雰囲気のある落ち着いた街。
近くにはフェイヨンダンジョンと呼ばれるダンジョンがあり、そこを治めるBOSS・・・否、魔族は「月夜花」
また死霊が蠢く場所としても有名であり、ピラミッド等とはまた一味二味も違う死霊たちが存在する。
どちらかというと人間の姿をした死霊が多く、ブリジットさんと一緒にいたムナック等が代表的と言えよう。
イング「何でまたフェイヨンなんか?あそこって最近ちょっと危ないって話してなかったっけ・・・」
そう、つい最近の噂だがあそこの近くのダンジョンを統括する「月夜花」が突如行方を眩ましたとの事。
それのせいで大規模なモンスター達の暴走があり、治安が悪化したという事件があったばかりである。
今は復旧作業を行うほどにまで沈静化したらしいが、それでもまだ危険な状態である事に代わりはない。
アリス「覚えてないの?SDで鈴さんと一緒に月夜花がいたじゃないの」
ユキ「・・・ああ、いたわね・・・あの狐っぽいの被ってた露出狂チックな生物。」
酷い言われようだが、月夜花は基本的に一般人から見ればそういわれても仕方がないので省略する。
話は戻すが、確かに鈴と一緒に月夜花がいたのは覚えている。
初めはフェイヨン繋がりで一緒にいるのかと思ったが、どう考えてもおかしな点は多すぎる。
何より最近消息不明とまで言われているのだ、そんな存在がなんであのような場所に?

アリス「ね、そんなこんなで私はフェイヨンに行くのを推してみるわ。何より私達の実力的にも丁度いいし」
イングに目を配りながら、アリスは話す。
あー・・・やはり気がつかれてしまっているのか。
つい先日の一件以降、自分は確実に力というものを意識し始めてしまっている。
上級職・・・つまり、二次職への転職。
自分達は、話によると今追い上げの所まで来ているらしい。
この調子で進めば転職も遠くはない・・・力を意識し始めた自分にとっては願ってもない話なのだ。
何か手がかりがあるかもしれない、さらには自分達に実力向上を見込める。
そういった点を踏まえて、どうやらアリスはフェイヨンを指定したらしい。
ユキ「私は賛成、闇雲に動くよりかは良さそうだしね。イングは?」
イング「うん、僕も賛成。ならフェイヨンに行こうか」

イング一行が目指すはフェイヨン・・・モンスターの襲撃で疲れ果てた街。



時「・・・なんだこの惨状は」
たった数日程度しか空けていない筈なのに、帰ってきてみればモロクはそれは酷い惨状であった。
モンスターに襲われたのか?
または大規模なテロにでもあったのだろうか?
どちらにせよ、並の物ではないと言う事が伺えた。

酒場は平気か?
皆は、フェイは無事なのだろうか。
実力がある者達ではあるが、やはり不安はぬぐい切れない。
時「・・・誰かいるといいが」
この場合、腕っ節のある酒場の者達は復旧作業を手伝っているせいで居ない可能性がある。
どうだ、せめて事情が聞けるまではいて欲しいものだが・・・

酒場の前に着くと、入り口には「CLOSE」という文字が貼られていた。
・・・外傷もこれは酷い。
窓の一角に大きな穴が開いており、そこから中が筒抜け状態である。
これは・・・壁として意味を成してないな・・・
そこの穴から、カウンターに一人のアサシン、そしてカウンターの中にカタリナの姿が確認できた。
よかった、どうやらまだここにいてくれたのか。
そこの穴から入るのは些か無礼なので、ちゃんと入り口から酒場へと入る。
カナリナ「あら、タイミング悪い時に来るわね、今来たら後片付けの手伝いして貰うわよ?」
「お、時の番人・・・か、初めまして、旦那の旧友です」
・・・ブリジット殿の旧友、か。
旧友?
時「手伝いは構わん。後、フェイは無事なのか?一体何があったんだ?後、旧友が居るとは初耳だな。」
カタリナ「ああ、質問多すぎよ・・・ちゃんと説明してあげるから、ちょっとそこ座って頂戴」
む、確かに一気に質問をしすぎてしまったようだ。
静かに少し傾いたイスに座ると同時に、飲み物を用意してくれるのかカタリナがカウンターの奥へと入っていく。
「まず俺の自己紹介と行こうか、俺の名前はシレウス。訳あって賞金関連の情報がてら旦那とは仲良くさせてもらってるよ」
・・・シレウス、となるとモロクの賞金関連の情報を統括する者か。
かく言う俺もブリジット殿がそういうところに行っているのは知っていたのでこれは話が早い。
シレウスは話を続ける。
シレウス「旦那ならいないぞ、突如姿を眩ましている。イング達も、その後を追うようにどこかいっちまったよ」
・・・どうやら、俺が居ない間に随分と話が進んでしまっているようだ。


このシレウスというアサシン、どうやら俺がどういった人物か知っているようだ。
そのせいか、先ほどから率先して様々な情報を提供してくれる。

ブリジット殿はあの後姿を眩ましている・・・それも、どこにいったかまったく判らないという状況。
イング達も、その後を追うように先ほど出て行ったとか・・・多分、様子からして鈴達はそれより早く出て行っているようだ。
この事件はどうやら愉快犯による大規模テロ・・・よくもまぁ、ここまでやってくれたもんだと思う。

カタリナ「はい、フェイは上で休んでいるわ。どうやら深遠が出たようで少し食らったようだけど・・・」
カタリナがおくから戻って来、紅茶を自分の前に差し出す。
少しこそ心配そうな声ではあったが、どうやら大きな重症では済まずに済んでいるらしい。
深遠・・・また偉い大物が出てきたようだ。
シレウス「また面白い話をしてあげよう、なんたってアンタも重要人物だしな」

そこから話されたのは、スフィンクスダンジョンであったという話。
・・・これはまた、かなりの発展ではないだろうか。
丁度自分もゲフェンへ禁術関連の調査にいってきたばかりであり、いくつか興味のある情報を手に入れてきたのだから。
時「・・・感謝する、代わりに俺が集めてきた情報を幾つか提供しよう」
シレウス「お、気が利くね。流石はあのフェイ=ヴァレンタインの夫さんだ」
時「ぶふっ!」
カタリナ(おお、あの時さんが動揺したわ)
カタリナ、今日初めての小さな感動。


時「ん、んんっ!・・・で、だな」

俺がゲフェンにいったのは何者でもない。
ブリジット殿が好んで行く場所の一角であった事、そして最近ゲフェンダンジョンのさらなる先が見つかり話題を及ぼしていた事。
行ってみれば成る程、これは中々どうして興味深い所であった。
ゲフェニアの世界は、常人が軽く足を踏み込んではいけないほどの殺気に満ちた戦場であった。
また、その世界を生き抜いた表では見たことのないようなモンスターが沢山確認できた。
中には人語を扱う、もしかするとだが・・・シレウスの話からするに「魔族」の一角かもしれないのまで確認できた。
そして・・・
時「最下層は酷いものだ、DL(ダークロード)と並びこの世界最強と言われるバフォメットが君臨していた」

バフォメット。
山羊の外見をした魔族であり、大きな古城に携える魔族ダークロードと肩を並べて最強と呼ばれる存在。
普段はプロンテラの北に位置する「迷いの森」にひっそりと暮らす魔族ではあるが、今回このような場に何故いたかは不明である。
酷いものだった。
あそこではまず蝿の羽や、テレポート等の瞬間的移動効果をもつものが一切封じられていた。
どうやらあそこのダンジョンの作用らしく、おそらくアマツのダンジョンと同じような効力を持っているのだろう。

また、さらにもう一つ不思議な体験をする事になる。
このダンジョンは、過去地上世界であった「死んでも死なない」効果が存在していたのだ。

今この世界は、何故か過去行う事のできた致死回避行動が出来なくなっている。
リザラクションがない限り、ダンジョン、及びフィールドでの力が尽きるは死を意味する。
だがここは違った。
瀕死状態になると、自然とカプラサービスと最期に話した場所へと戻る事が出来たのだ。
この場所に人間の死体は不要と言う事なのか?それとも死霊の念等をバフォメットが嫌ったのだろうか?
どちらにせよ、この世界には死と言う事が存在しなかったのだ。
故に、冒険者達からは緊張こそしているもののどこか気を許してしまっている点が伺えた。

俺は何とか進みながら、最下層へと進む。
最下層には大きな謎の言語を話すゴーレム以上の大きさをしたモンスター等で溢れ返っていた。
ただ、ここは基本的にフェイクエンジェルというモンスター等が都度なようで、途中まではサクサクと進む事が出来た。
その気の緩みが少し出てしまったのだろうか?
気が付いた頃には・・・
バフォメット「・・・ヌゥ?こうも多くては処理するこちらの身が持たんな・・・」
前の冒険者が奮闘する中、そう呟きながら冒険者と対峙するバフォメットの姿が確認できた。
だが、何か普段から聞くバフォメットとは些か雰囲気が違う。
そう判断できたのは、何者でもないバフォメットから送られてくる殺気である。
このバフォメット、どうにも殺気が感じられない・・・?
何故かは判らないが、人間を虫けら扱いする事で有名なBOSS,バフォメット。
そのバフォメットが、我々人間に殺気の一つも発していない?
バフォメット「・・・」
相手にしながら、バフォメットの目が俺の目を捉える。

成る程、こうして対峙してみれば相手と俺の力量の差がはっきりと判断できた。
こいつはだめだ、戦って勝てる相手ではない。
バフォメット(フン、またわらわらと出てきおる)
そうして、またバフォメットは目の前で奮戦する冒険者へと目を向けた。



時「・・・逃げた方がよさそうだな」
様子からしてバフォメットはまったく弱っていない。
冒険者達が倒れるのも時間の問題であろう。
そう判断した自分は、即座に後ろにあった橋を渡った。
その下は川のようなものが流れており、落ちたらまず助かる見込みがないような高さのものであった。
慎重に、されど急ぎながら先へ進む。
時「・・・くそっ!」
その橋の先で、自分の姿を楽しそうに待ち構える存在。
外見こそ女性なのだが、このゲフェン地下・・・ゲフェニアに君臨する一角。
「あらぁ、お次はアサシンねぇ、いらっしゃぁーい」
名は、「サキュバス」

時「くそ、仕方がないか・・・!」
チャキ・・・ジュルが、小さく音を鳴らす。
下に落ちたら助からない、だとすれば何とかサキュバスの後ろに回り込んでこの地理的不利をまず打破しなければ。
だが・・・
サキュバス「まぁ、こうしちゃえばすぐよねぇー」
こちらの考えなどお見通しといわんばかりに、橋の綱が一本切られてしまう。
ぐらっ・・・片方の重心を失った橋が、大きく傾く。
何とかもう片方の綱を掴むが、お陰でまったく身動きが出来ない状況となってしまった。
サキュバス「やっぱし脆いわねぇ、羽でもあれば飛べて逃げれるのに」
サキュバスには、立派な羽がある。
故の発言なのは判っているが、無理難題をこのサキュバスは言ってくれるものだとつくづく思う。
サキュバス「・・・ん?貴方・・・あれ?あれれ?」
自分の近くまで飛んでくるや否や、不可解そうに言葉を濁すサキュバス。
当事者のサキュバスが判らない事が俺に判るはずはなく、しかし綱に捕まったままなのでこれ以上の動きをする事ができない。
今、俺の命はこいつが握っているといっても過言ではないのだから。
サキュバス「んー、匂いがちょっと違うような・・・あー、でも生き残りが居るって事なのかなぁ、これって」
・・・生き残り?一体このサキュバスは何を言いたいのだろうか?
意図が掴めず、そして落ちる一歩手前のせいで偉く自分は危機状況がマヒしてきている状況にある。
サキュバス「ねぇねぇ貴方、貴方が出会ったのは誰?虚無の奴?それとも傀儡?ねぇどれよぉ?」
時「な・・・お前、禁術の事を言っているのか?」
いや、確かにここにはそのての情報がないかと思い来たのは認めよう。

しかしだ。

こんなすぐに、しかも敵対している魔物から情報がポンと出てくるなんて一体どうなってるんだ?
しかもこの話し方からして・・・もしかするとだが。
このサキュバスは、禁術のことを完全に把握しているのか?
サキュバス「だんまりなんてひっどぉーい。こっちはずぅっとこんな所で閉じ込められて文句の一つもいいたいところなのよ!」
プリプリと、終いには勝手に怒り出す始末。
いや、閉じ込められていたとか、そんなの俺のしったこっちゃないんだが・・・
時「サキュバス、情報交換と行こう。お前がいくつかその事項に関して話したら俺も知る限りを話す、だから教えてくれないか?」
サキュバス「いいわよ、貴方からは似た匂いがしてるから誰かと接触しているのは確かなのよ」
嗚呼、ブリジット殿、貴方がいなくてもどうやら答えにたどり着けそうです。
この死にそうな状況でなければ喜んで話を進めるのだが、それは欲を張りすぎか。
・・・まぁいい、ここはどうやら特殊な作用で死なずに戻れるらしいしな。
初めてここで、その作用を喜んで受け入れた瞬間だ。
サキュバス「神速・・・?ああ貴方神速に出会ったのね?あのえらそーなのかぁ・・・あ、見習の人はいなかった?」
見習?
禁術の話が出て、その次は見習い?
時「見習?見習とはどういう事だ?」
サキュバス「そりゃぁ見習いは見習いよ。彼女、私と良く仲良くしてくれててねー、偉い人なのに生気も良く飲ませてくれたの!」
えへへ、と思い出しだろうか、嬉しそうな表情を浮かべるサキュバス。
彼女・・・つまり、その見習いと呼ばれる存在は女性だったのか。
ふわっと、考えていると同時に自分の体が宙に浮く。
上を見ると、サキュバスが俺の体を持ち上げて先ほどサキュバスがいた場所へと運んでくれるようだ。
サキュバス「その子とは違うけど、他の偉い人とは出会ってるようね、貴方一体何番目の人?それとも関係者だけなのかなぁ?」
何番目?関係者?
どうやらこのサキュバスはこちらがまったく話についていけていないのを判っていない様子だ。
しかし・・・何番目?と言うことから番号・・・つまり多数、さらに数えられる程度の頭数が存在していたと言う事か?
関係者と言う言葉があるからに、何かしら集団・・・もしかすると、規模が大きければ組織じみた所だったのか?
もう少しで、サキュバスが先ほどまで立っていた所に着く寸前であった。
・・・あれ?
時「・・・サキュバス?お前、体透けてきてないか?」
ん?と声をあげながら、サキュバスも自分の体を確認する。
・・・
サキュバス「あーれー、どうやら外で古木の枝がおられたみt・・・」

・・・ああ、落下してる、落下してるぞ俺。
貴重な体験だ、身をもって経験しておこう・・・。



シレウス「あー、枝で呼ばれたか、多分そのサキュバスもろくに召還されたな・・・処理もされているだろう」
手がかりが・・・と、うなだれる時を見て自分もうなだれる。
それ、思いっきり核心・・・核心級の情報だよ・・・
だが、これで判った事もない訳ではない。

やはり、過去禁術を所持していた者は多数存在していたようだ。
しかも見習い・・・時期禁術所持者がいた、と推測しても間違いではないだろう。
となると、禁術は受け継ぐ等のタイプか、自己でひらめくか、その他と言う事か?
見習いがいた以上、おそらく禁術は永劫的に続くものではないように思える。
永劫に続くのなら、そんな見習いなど不要、そのままその人物が行えばいいのだろうから。

また、増強目的での見習いとも読み取れる。
こちらの場合は新たな仲間として迎え、共に働く次期同僚と言う名目での見習い・・・こちらも否定は出来ないだろう。
こちらの場合、受け継ぐではなく己の力、または外部的なもので新たな力を手に入れるケースと予想すべきだろう。

んー・・・
時「どちらにせよ、貴重な情報源を失ったと言う訳だ。」
・・・なんだよなぁ・・・。



時「俺はフェイの様子を見てくる」
そう言って、二階へと音を立てずに上がっていく。
伊達にアサシンではないなぁ、彼・・・
シレウス「まぁいい、俺は俺で情報を集めるさ、徹底的にな」
情報源は確保した。
旦那の側近であった時の番人、彼経由であるいはフェイの情報とてもらえる可能性がある。
またイング、彼等は旦那との繋がりが深い・・・こちらも期待していいだろう。
俺は・・・また、歴史を追って確実に駒を進めるとしよう。
シレウス「まだまだ、俺は終わりませんよ」

俺は歴史を追う者。
すべてを知るまで、後ろは振り返らない。
たとえ、歴史そのものに警戒を促されようとも。



つづく




〜あとがき〜
いかがお過ごしでしょう、鰤です。
あー・・・さて。

ごめん、影響されすg(ry

いえ、大体そういう感じのキャラと決めている矢先にあんなのに出会うから・・・w
意味が判らないって人は通常日記ご参照ってことで(宣伝

とはいえ、今回の件は今までの禁術のおさらい、そして読みあい合戦となっております。
読者の皆様は、今回のこの読みあいを経てどのように見ますでしょうか?

まだまだ続くラグナ小説、次回またお会いしましょう。
それでは♪
SEO対策 ショッピングカート レンタルサーバー /テキスト広告 アクセス解析 無料ホームページ ライブチャット ブログ