ラグナロク・オリジナルストーリー第四話―対人


イング達はブリジットより教わった経験積みとして最適だ、と教えらた場所を目指していた。
アリス「イング、一体どこへ向かっているの?ブリジットさんに教わった場所だ、とかいってたけど・・・」
新しく買ってもらった剣などをを嬉しそうに見ながら、イングは機嫌が良さそうな声で答える。
イング「なんでもね、この先の方にでっかいバッタの姿したモンスターがいるらしいんだ。そこが初めはいいだろうってさ。」
その言葉に「でっかいバッタかぁ・・・早く見たいね!」といった元気のある明るい声を出す。
ちなみに、さっきからユキはずっとブリジット達と別れる前にもらったギルトメンバーの象徴であるエンペリウムを、
「ほえぇ・・・」と呟きながら見ていた。
イング達からもそうなのだが、何か引き寄せられるような、何か特殊な力が宿っているような感じのする宝石だった。
すると、急にこっちを向くユキ。
ユキ「そいえば・・・昔からブリジットの知り合いだったのよね?あいつって昔どんな奴だったの?」
その質問に対しアリスも反応する。
アリス「あ、私もそれ興味あるな〜・・・結構歩いたしさ、ね!ちょっとあそこの木陰で休憩しながらちょっと話しない?新しいPTMの話も兼ねて、ね♪」
そう言うとイングを上目で見るアリス。
・・・ぅ、そんな目で見られたら断れないじゃないか。
少し悩んでいたようだが、ふっと笑いイングが降参、といった表情で両手を肩辺りまで上げる。
イング「仕方が無いなぁ・・・じゃちょっと休憩しよっか!でもちょっとだけだからね!」
そういうとアリスとユキが「やったぁ!」という声を上げて木陰へ走っていく。
まーた、アリスに上手い事やられちゃったなぁ・・・自分。
そう思いながら苦笑ぎみでその木陰へと向かっていくイング。
女性陣は今日も元気いっぱいである。



イング「・・・てな訳なんだ、あの人は昔からあんまし変わってないよ・・・変わったといえばやっぱギルトだけかな。」
その話に興味津々といったユキ。アリスは「へぇ〜・・・」と頷いてばっかりである。
アリス「そいえば・・・ブリジットさんのギルトってさ、時の番人さん以外誰がいるか知ってる?」
その質問に対し戸惑うユキ。
ユキ「あぅ・・・私知らない・・・」
少し凹んでいるユキに対し、すかさず助け舟を出すイング。
イング「ユキさんは入ったばっかだし仕方が無いさ。えっとね・・・ギルトメンバー、まずは時の番人さん、知ってるよね?」
その問いかけに対し頷くアリスとユキ。イングは話を続ける。
イング「あとはね・・・確か騎士のセニアさん、アサシンのみたらしさんってのがいると聞いたよ。」
実際見たことは無いけどね、と後から付け加える。
当の話を聞いていた二人は、驚きを隠せない。
ユキ「て・・・ててててて事は!!皆上級職のギルトなの!?」
その質問に頷くイング。アリスは口を開けてびっくりした状態のまんまである。
イング「あとは・・・ギルトメンバーじゃないんだけど、アサシンのフェイさんって方が強い知り合いなんだよ〜、とか言ってたな。」


聞いていて、二人は何故あそこまでかたくなに時などがユキのギルト入りを拒んだのかようやく理解した。
そう、まず力の差がありすぎるのだ。
大きなため息をつき、落ち込むユキ。
ユキ「そうよねぇ・・・そんな上級職の集団に私が入っちゃ邪魔だったわよね・・・あぅ、入れてなんて軽はずみすぎたかも」
そう、軽く愚痴をこぼす。
アリス「でもブリジットさんはOKだしたんですし、これから皆で強くなっていけばいいじゃないの!頑張りましょうね皆!」
そう言うなり二人の前でガッツポーズを取るアリス。それを見て笑う二人。
ユキ「そうよね!これから強くなってけばブリジットのギルトに胸を張って行けるもんね!よーし、がんばらなくちゃ!」
その言葉に頷くイング。
イング「そうだね!よければ他のブリジットさんのギルトメンバーの方にも会いたいね・・・」
アリス「じゃあさ!そのバッタの姿してるモンスタ―に余裕で勝てるようになったら一回ブリジットさんに会いにいかない?」
その提案に「賛成ー!」と手を上げ大きな声を出すユキ。イングも笑って「その案、良いね」と言う。

はたからみればこの三人はとても微笑ましい光景であった。この状態を人は"平和"と言うのだろう。
そう、奴等がくるまでは。



「残念だが・・・てめぇ等があいつ等に会う事は叶わねぇだろうなぁ・・・」
急に横の方から声と共に殺気を感じた。冷たい、体が震えるような悪寒と共に。
慌てて戦闘態勢をとる三人。
イング「なっ・・・誰だ!」
横を見ると、モロクでポタ屋をやっていたアコライト、そしてその時後ろにいた剣士の男がいた。
少々体を震わせながら、ユキが二人に対し敵意剥き出しで言い放つ。
それは、はたからみてもわかる・・・虚勢。
ユキ「さっきの言葉・・・どういう意味よっ!」
するとその質問をあざけ笑うかのような声で剣士の方が質問に答える。
剣士「へっ、言った通りだよ・・・てめぇ等を今から殺るんだよ。ははは!んな事もわかんなかったか!?」
その言葉に、動揺の色を隠せない三人。
その表情一つ一つを確認しながら、相変わらず前の二人組はこちらを見て笑っている。
イング「なっ・・・僕等を殺るって?一体何をいって・・・」



その言葉を遮るかのようにでかく、そして荒々しい声で喋りだす剣士。
剣士「てめぇ等何夢見てんだよ、あぁ!?この世界は弱肉強食、強ぇ者は弱者を食べて生き残ってく世界だぜ!?」
アコライト「まぁ冥土の土産として教えてやろうか?モンスターより人間の方がより多い経験積めんだよ・・・」
表情をまったく変えず話を続ける二人。
あちらは戦闘態勢をとっていないが、イング達は戦闘態勢を解かない。
アコライト「んで俺等は考えた!てめぇ等みてぇな初心者狩ってればすぐ経験が積めるってな!!良い案だろぅ!?」
わからない。
彼等はそんなことが許される行為だと思っているのだろうか?
そう思った時、不意にアリスが口を開ける。
アリス「あなた達は・・・人の命を何だと思っているんですか!?人は物じゃないんですよ!?」
その発言に、二人は「おー恐い」などと言い挑発する。
アコライト「ははっ、平和な考えなこった・・・所詮この世は強ぇ者が正義なんだよ!何度言ったらわかるかねぇ・・・」
肩をわなわなと震わせるイング。
その口から、低く、ゆっくりと言葉が放たれる。
イング「・・・今までにどれだけの人をその勝手な考えで殺してきたんだ?」
その質問に対し笑いながら答える二人。
剣士「何人だっけなぁ・・・弱ぇ奴の事なんかいちいち覚えてらんねぇよなぁ?」
アコライト「毎回どいつもこいつも命ごいするの、あれ正直うぜぇよな・・・」
その言葉を聞き、イングの中で"何か"が切れた。



イング「お前等は・・・お前等だけは許しておけない!」
二人の方へ、剣を抜き突っ込んでいくイング。
咄嗟に、アリスが声を上げる。
アリス「だめっ!!イング止まって!!」
しかしイングは聞く耳を持たない。
ただ、怒りに任せてその二人になりふり構わず突っ込んでいくだけだ。
おろおろして行動を起こそうとしないアリスに、ユキがどなりつける。
ユキ「くっ・・・アリス!ぼーっとしちゃだめ!私達も・・・嫌だけど戦わないと殺されるわよ!?」
そういうと、呪文を唱え始めようとするユキ。
ユキ「私は後方から支援するわ!アリスは急いでイングの援護に回ってあげて!」
どなりつけられ、少々落ち着く事が出来たのか。
「わ、わかった!」というなりイングの方へ向かうアリス。
前の方ではイングと二人の内の剣士が激しい戦いを繰り広げていた。


イング「く・・・くそっ、力量が違いすぎるっ」
剣士になったばかりのイングでは、この戦闘は誰が考えても旗色が悪かった。
そう・・・今戦っている剣士よりも、力が、経験が無いのだから。
剣士「てめぇ等みてぇな初心者にやられる訳ねぇだろうがよぉ!!」
そういうと、思いっきし力任せに剣を大振りしてイングをアリスの方へ吹き飛ばす。
イング「ぐっ・・・」
アリス「いけない・・・血が出てる。ちょっとまってね・・・ヒール!」
そう唱えると、みるみるイングの傷が塞がっていく。
「ありがとう」と、笑ってみせるイング。
剣士「おらおら!!他所見してていいのかよぉ!?」
そう言い放ち、イング目掛けて猛ダッシュしてくる剣士。
「さがって!!」という声と共に、剣と剣のぶつかり合う音が回りに響き渡る。
イング「アリスには手を出させない・・・はぁっ!!」
その声と共に「なにっ!?」と声を発し一旦後ろに身を引く剣士。
イングの剣に一目向けた後、ばつが悪そうに舌打ちをした。
剣士「ちっ・・・あの上級職の奴等のおかげか・・・装備だけは一級品てか!」
確かにその剣士の言う通りであった。
初めの装備の状態であったなら、あの剣士の力量からまずイングは速攻で殺されているだろう。
イングの額から、汗がツ―と滴り落ちる。


ユキ「イングちょっと下がって!!私の呪文で少しそいつの口きけなくさしてやるわ!!」
そういうとなり呪文を唱え始めるユキ。しかし剣士は何故か不敵の笑みを浮かべている。
ユキ「何がおかしいのよ!!・・・くらえっ!ソウルストラ・・・」
「ははっ!魔法もいえず足手まといでてめぇは死ぬんだよ!」
呪文がいい終わる発動直前の事であった。
急に後ろから声がしたのである。声と共に盗賊が姿を現した。
ユキ「えっ・・・いつのまに!?」
何故そこに盗賊がいたのか、ユキは理解が出来なかった。
ただ、この時彼女がわかってしまったこと。
それは・・・
自分に迫る、死。


ユキ「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ユキの断絶魔は短いものであった。
高い声を上げ、どさっと地面に力なく倒れる。
背中からは、止め処なく鮮血が流れている。
イング「!!! ユキさん!!」
その声に反応して、イングが一瞬視線を剣士から外してしまう。
それが、命取りとなってしまった。
突如、イングは何かずっしりと重たい物を背中に背負った感覚に襲われた。
実際には剣士に"切られた"のである。悲しくも声さえ出ずに倒れるイング。
イング「・・・!!つっ!!」
その姿に目を潤ませ近づいてくるアリス。しかしそれがまずかった。
後ろの方まで近づいてきたアコライトの鈍器が、彼女の肩に直撃したのである。
アリスもまたイングの上に被さるような状態で倒れる。その姿を見て笑う三人。
剣士「ははっ!てめぇ等らしい死に方だな!!・・・まだ息あるみてぇだな・・・このままいっその事死ぬのまってるか?」
そういって、より一層高い笑い声を発する三人。



・・・畜生、体がいう事をきかない・・・皆は・・・皆は無事だろうか・・・


そういってかすれていく意識を何とか紡ぎ合わせ周りを見るイング。どうやら三人のいった通り、全員息はしているようである。
それが、彼にとって非常に喜ばしい事であった。


よかった・・・皆まだ生きてる。・・・僕はどうでもいい・・・僕以外は絶対に生きて帰らせる!!


人とは生死の瀬戸際に立たされると、通常の何倍の力で動けるらしい。
いわば"火事場の馬鹿力"というのである。
イング「おぉぉぉぉぉ!!!」
雄たけびに近い声を発するなり、立ち上がり様剣を再度握り締めその剣士に突っ込んでいく。
剣士「ははっ、まだ動けやがったか・・・なんでかなわないってわかんねぇかなぁ!!」
そう言うと手に持つ剣を持ち直しイングに突っ込む剣士。
剣士「ここでてめぇの人生もおさらばだな!!」
そういった次の瞬間、剣士の方にイングが持っていた剣が直線を描くように突っ込んできた。
奴め、血迷ったか!
難なく、剣を大振りで弾く。
剣士「ふん、何を考えて・・・がはっ!?」



その姿に唖然とする、二人。
剣を弾いたと共に、イングは剣士を思いっきり殴りつけたのだ。
余裕を見せ付けすぎて、剣に対する反応が粗暴すぎた為に出来た事といっても過言ではない。
派手に大きく吹き飛ぶ剣士。
・・・しかし、イングの"足掻き"はそこまでであった。
殴ると共にそこに倒れるイング。
倒れた地面一帯が、じょじょに赤く染まっていく。
すると、少したってから左頬を真っ赤にした剣士がイングの近くまで近づいてきた。
剣士「てめぇ・・・何しやがんだよ!!!」
そう言うと共に、イングの横っ腹を思いっきり蹴る。
イング「かはっ・・・」
その姿を見ていたアリスが息を荒くしつつ、やっとの思いで泣く泣く声を出す。
アリス「や・・・やめてーーーー!!」
その声をきくなりアリスの方を向く盗賊。
盗賊「ははは!何言ってんだか、やめるつもりなんかあったらこんなとこしてねぇっつーの!!」
そういってまた笑い出す三人。



やっぱしだめだった・・・皆を助ける事ができなかった・・・皆ごめん・・・


心でそう呟くイング。
力が・・・もっと力があれば・・・
嘆いても、変わることのない現状。
彼等に待つのは・・・死。
そして、突如痺れを切らしたのか、剣士が剣を抜く。
剣士「ははっ、仲間のお二人さんよ!よーくみとけよ!こいつのラストをな!!」
そういうなり、剣の先をイングに向ける。
アリスが何か叫ぼうとしたが、もう声がでない程衰弱していた。ユキは気を失っているらしい。
笑いながら剣を振り落とす。


アリス(や・・・やめてぇーーーーーー!)
誰にも届く事のない心の叫び。
折角・・・折角これからだっていうのに!
目を潤ませながら、イングの方を見た。
アリス「!?」
急に、体の痛みを感じないほどの恐怖心が自分を襲った。
体を震わせながら、彼等の方を向く。
そして、彼女は見ることになる。

"悪魔"を。



突如ここにいた全員が体を硬直させる。
ブリジット「何やら大変な事になっているようですねぇ・・・?」
そう言いながら、微笑を浮かばせる。
動きたくない、動いたら殺される。という考え以外三人の脳裏にはよぎらなかった。
剣士(なんだ・・・なんなんだ!?)
あまりの悪寒に、脂汗が出てきている。
先ほどまで虫の息だったアコライトとマジシャンにちらっと目を向ける。
剣士(・・・いない!?)
な、何がどうなっているんだ・・・。
「状況が理解できてないようだな・・・説明してやろうか?・・・私が手当てしたんだよ」
突如聞こえたその声に、びくっと体を震えさせる三人。
すー・・・っと、目の前にこの騎士と一緒にいたアサシンがいた。
ブリジット「時さん、こいつ等は私に任せていいからイング達を安全な場所へ。」
時「・・・了解。」
その声をきいた三人が気付いた後には、さっきまで自分の近くにいたイングを抱え、歩いている時。
・・・俺等の目ではあいつの動きが追えないってか。
イング達を連れて先程休んでいた木陰へと誘導する。遠くなるのを確認するブリジット。



ブリジット「さて、と・・・弱肉強食、ですか・・・」
そう言って三人に近づく。怯えてるのもお構いなしに話を進めるブリジット。
ブリジット「てことは?ここで私が貴方達を殺してしまっても文句はありませんよね?」
そういうブリジットに対し恐怖が絶頂に達したのか。
剣士が剣を持ち「うわぁぁぁぁぁぁ!!」と絶叫しながら突っ込んでくる。
その姿に対し苦笑ぎみなブリジット。
なりふり構わず突っ込んでくる剣士を、きっと睨みつける。
ブリジット「・・・少々黙っていてはもらえませんでしょうか?」


その言葉と共に、剣士が後方へ思いっきり吹き飛んでいた。
そう、また"殴られた"のだ。
他の二人はガタガタ震えて動こうとしない。
剣士が立ち上がるのを確認するブリジット。
ブリジット「・・・まぁ、さっきのは冗談さ。君等には何もするつもりはない」
その話に安堵の表情を浮かべる三人。
ブリジット「しかしだ。今後初心者狩りなどしたらただじゃおかない。無論そういう行動が予想されるような発言もだ。守れるかな?」
その質問に対し無言で必至に頷く三人。
それを確認した後、ブリジットは戦闘態勢を解く。
ブリジット「先程の約束、守った方が君達のためだよ。了解した、君達を信用しよう。・・・ほら、いっていいよ。」
その声と共に、逃げるように立ち去る三人。
その姿を確認して時がブリジットに近づいてくる。
時「・・・よほど精神的にも体力的にも追い詰められてたんだろう、三人共死んだように寝ている。」
ブリジット「にゃはは、ありがとうね〜。・・・すまないがちょっと頼む。もしもの時は仕方が無いがね」
時「・・・御意。」
そういうと、時は姿が見えなくなる。



ブリジット「早速"初心者狩り"の奴等に会ってしまうなんて・・・運悪いなぁ」
そう、ばつが悪そうに呟く。
どうやら奴等は"初心者狩り"と呼ばれる連中らしい。
ブリジット「さて、と。まずは三人をプロンテアの宿まで連れていかないと・・・」
そういうとなり、一人一人ペコペコの上に乗せていく。
クェーと声を上げながら、ペコペコも上に乗った人を落とさないように動きを止めている。
イング、アリスを乗せた時に、ブリジットの表情が一瞬固まる。
ブリジット「・・・ぬぅ、ユキは私が持っていかないと乗れんな、こりゃ」



最期の一人であるユキを抱えた時ユキが気がつく。持ちあげた時激しくゆれたせいか。
ブリジット「あ、ごめんごめん起こしちゃった?まだ寝てていいよ〜」
抱えられている姿に一瞬びっくりしたようだが、ブリジットと確認するなり急に泣き出して顔を胸辺りに埋めてくる。
ブリジット「え?ど・・・どうしたの!?」
その質問など聞きもせず甲高い声を上げて泣き続けるユキ。
・・・多分恐怖から開放された反動、だな。
泣き続けるユキの頭を撫でて落ち着かせるブリジット。
「もぅ平気だから〜」といった相変わらずの緊張感の無い声だったが。
逆にユキにとって今の状態から緊張感のない方が安心するのも事実である。
ユキ「・・・ありがとう・・・」
ブリジット「え?何ていった?」
聞き取れなかったのでもう一回質問し返してしまったが、ぼそっと呟いたと共にまた眠りについてしまった。
かくして二人をペコペコにのせ、一人をいわゆる"お姫様抱っこ"状態で"首都プロンテア"に行く事になったブリジットであった。
ブリジット「う・・・この姿・・・絶対プロンテアで変な目で見られる・・・」
何かずれているというか、この人はこのような状態でも相変わらずであった。



剣士「はぁっ・・・はぁっ・・・もうあいつ等は見えねぇよな?」
走ってきて何分だったろうか、やっと声が正常に出るようになった。
盗賊「あぁ、もぅ平気みたいだな。・・・少し休まないか?」
そういって走るのをやめ、止まる三人。
アコライト「あぁ思い出すだけでもうぜぇ・・・あの騎士さえいなければ・・・」
その発言に先程の事を思い出したのか、三人が青ざめる。
しかしその反面、なんともいいがたい怒りがこみあげてきたのもまた事実である。
剣士「あぁ、あの上級職さえいなければ・・・どうする?あいつ等諦めるか?」
その発言に全員が黙ってしまう。頭の中で天秤にかけているのだろう。
すると不意に盗賊が声を出した。
盗賊「・・・すまねぇがこんな屈辱初めてだ。・・・諦めきれねぇな。俺はあの三人を殺す、絶対にな。」
剣士「同感。・・・上級職さえいなけりゃ平気だ。先程でそれがすでに実証済みだしな。」
くくっ、と笑い声を小さく漏らす。
アコライト「といってもあの騎士も甘ぇな・・・そんなにすぐ心変わりする奴が初心者狩りなんかするかってーの。」
剣士「まったくだな!ははっ!こんなおいしい話だ!あんな約束守ってられっかってーの!」
そういって笑って捨てる三人。


「そうか、貴様等の意思、しかと聞き遂げた。・・・非常に残念だ。といっても我々として予想してた事態だがな。」
「誰だ!?」と辺り一面に叫ぶ剣士とアコライト。
盗賊だけが今の事態をわかっていた。・・・自分の顔がじょじょに青ざめていくのが嫌でもわかった。
盗賊「しまっ・・・おい!早く逃げっ・・・!」
「君の予感は的中しているだろう。・・・が!今さら気付いても遅い!」
その声をきいて逃げようとする三人。・・・しかし"その技"の完全に範囲内であった。
「グリムトゥース!!」
激しい土煙が上がる。
激しい音と共に悲鳴を上げ倒れる三人。・・・しかし殺してはいない、足を切り刻んだだけである。
三人の意識もはっきりしている。
歩けなくなり、青ざめる三人の目の前に先程の騎士と一緒にいた"時"と呼ばれるアサシンが姿を現した。
盗賊「くそっ、クローキングで後つけていやがったな・・・」
時「ご名答。それで貴様等が止まった時即座にハイティングをして身を隠した。・・・タネ明かしはこんなものでいいか。」
不意に時は"動けなくなった標的"に向かってくる。
剣士「く・・・くるなぁ!!」
そういって後ろへとずりずりと後退していく三人。しかし当然逃げている行為にすら数えられない。
時「普通の生活に戻っていればこんな事にはならなかったものを・・・あの恩恵を素直に受け止め更生すればよかったものを・・・。」
そう落胆したかのような声を発するなり三人を激しく睨みつける。
後退する事をやめる三人。息をする音さえ鮮明に聞こえる。
時「あの三人の冒険の邪魔をこれ以上させる訳にはいかん。我々のギルトの大事な弟分なのでな。そして・・・」
時の殺気がより一層高まる。三人はそれを体で実感した。
いや、状態からいって"実感せざるおえなかった"が正しい。
時「残念だったな。さらばだ」
三人「う・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」




ブリジット「やぁ、お帰り・・・その姿だとやっぱ駄目だったみたいだね」
時「残念だがな・・・すまない。」
ブリジット「にゃは・・・まぁ仕方がないよ。私はユキとイングを看病してるからさ、後ろのベットで寝てるアリスの看病頼むよ」
時「了解した。」
ブリジット「。・・・彼等だけには平和な冒険をさせてみせるさ。」
そういうなりこの宿内で二人せっせと看病に励むのであった。



つづく




〜あとがき〜
いやはや、かなり雰囲気がかわりましたね。ちわ、ブリジットです。
今回とっても予想に反して長く、そしてダークな内容となりました。・・・といっても完璧にダークではありませんが。
いまだ導入されぬPKシステムができた場合、こんな状況もありえますよね^^; 経験値の話はなさそうですがw
本来ラグナ世界ではこのような殺伐とした雰囲気があって当然の世界なのにほのぼのしてますよねーw
まぁチーターさん達みますと殺伐といたしますがね(ぉ なのでそんな雰囲気がでるようがぬばってみますた。
今回は賛否両論わかれちゃうのかなw・・・でもやっぱラグナの世界にも殺伐とした雰囲気あっていいよね!?萌ばっかじゃないよね?w
次回はまぁ・・・お楽しみってことで!またお会いできる事を楽しみにしております!それでは〜♪





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