ラグナロク・オリジナルストーリー第八話―月夜花



ブリジット「ん〜・・・やっぱしハエの羽使ってくると早くて楽だなぁ。」
体を伸ばすブリジット。
ハエの羽・・・ハエの羽に呪いをかけたもので、そのフィールドのどこかにワープするという機能を持っている。
そして今ブリジットがいるのはフェイヨンダンジョン地下五階。今フェイと時が向かっている所である。
何を言わず辺りを見回す。
ブリジット「狐達が見えないな。狐達・・・殺られたのか?死臭がすごいや。」
そう呟くと前方に何かを見つける。小さい影が二つ・・・片方は人影?
近づいてみると、不思議な服装をした少女が九尾の狐の近くに座っていた。
ブリジット「ふむ・・・あの少女、おそらく・・・。」
何やら呟きながら狐と少女に近づく。
狐と少女もブリジットの存在に気付いたのか、狐の方はこちらに対し殺気を放っている。
より近くなると攻撃を仕掛けようとしたのか、狐が立ち上がる・・・しかしすぐ崩れ落ちる様にまた座ってしまった。
よく見てみると、狐の方が怪我をしている・・・切り傷、しかもかなり深い。どうやら両手剣で切られた跡のようである。
・・・やれやれ。



戦う意思は無い、という意思表明に剣をペコペコに置き少し離れた所に移動させる。しかし狐は警戒を解かない。
仕方が無いので持っていた赤ポーションを沢山地面に置いて、「使いな〜」と一言言い、ペコペコの方へ戻っていくブリジット。
すると、少女は置いた赤ポーションへ近づき持つなり、こちらにお辞儀をしてふらふらと不安定そうに狐の方へ戻っていく。
何とか狐のそばに戻り、手にした赤ポーションを狐に使ってあげようとする少女。
しかし首をかしげ困り果てた表情でこちらを向く。
・・・どうやら使い方がわからないらしい。苦笑しながら狐と少女の方を向く。
ブリジット「おぉぃ、私は戦うつもりはないよ〜。赤ポーションその狐に使いたいんでしょ?狐を説得してくれぃ、じゃないと近づけない〜。」
そう大声で話す。すると何やらごそごそと狐と何かをしている・・・どうやら説得してくれているようだ。
すると、すぐに少女がこちらに向かって手招きをする。一応剣はペコペコに置いたまま、手ぶらで近づいていく。
近づくと、少女が震えながら先ほど持ってきた赤ポーションを自分に渡す。「平気だよ〜」と笑いながら受け取る。すると狐の顔がこちらに向く。
狐「珍しい人間だな・・・人間から恐れられている私を助けようなどとは。」
そう呟く九尾の狐。かなり表情が厳しい・・・どうやらかなりの深手のようだ。
ブリジット「困ってる時はお互い様ですよ・・・っと、動かないでくださいね、あーちょっと冷たいけど我慢してね〜。」
そう言い手に持っている赤ポーションを傷口に溢すような感じでかける。
するとみるみる傷口が塞がる・・・が、まだ表情に余裕は見受けられない。
ブリジット「くぁ・・・困った、随分と傷深いね。外見は治りましたが内部がまだ駄目ですね。まぁ君の事だ、安静にしとけば治ると思うよ。」
そう言って安静にするよう進める。しかし狐は首を横に振る。



狐「そうもいってられなくてな・・・この子を守らねばならない。」
そう言うと少女を見る。震えはなくなったものの、相変わらず自分の方をじーっと見つめている。
・・・そんなに私が珍しいのかな?
ブリジット「・・・よろしければお力になりますが?お話を伺ってもいいでしょうか?」
そんな自分の提案に、心底驚いた様な表情を浮かべる。
狐「・・・本当に珍しい奴だな、助けるなどと私にいった人間はお前が初めてだ・・・いや、話し掛けようとすらしてこない、の間違いか。」
そう呟き苦笑する狐。
狐「この子は・・・人間ではない、我々の長の月夜花だ。といっても外見は人間とあまり変わらんがな。」
その話にあぁ、と納得した表情をする。すると先ほどとと同じ少し苦しめの表情を浮かばせる狐。
狐「く・・・私も選択しているような状況ではないしな・・・すまぬが手を貸してはもらえないか?珍しき人間よ。」
珍しき、の部分についつい吹き出してしまう。 その笑い声につられてなのか、後ろでこちらを見ていた月夜花も笑う。
狐「ほぉ、この子が人間に笑顔を見せるとは・・・お前はもしかすると本当に信用できる奴かもしれんな。」
そう言うと月夜花に前へ出るよう促す。下を向きながらちょこちょこと歩き前に出てくる月夜花。
狐「本来我々九尾の狐はこの子を守る義務があるのだ。といっても我々九尾も今は私だけだがな。」
そう遠くに視線を向け、悲しげな声で話す狐。
狐「我々は死んでもすぐ生き返る事が出来る・・・といっても少しの月日は必要だがな。しかしだ。」



「その月叉花がいないと生き返ることが不可能になる、でしょう?」
突如横より声が聞こえた。横を見ると金の長髪をなびかせ、一人の女性が立っている。姿を確認するなり立ち上がる。
ブリジット「これはこれは・・・お久しぶりです玉藻前さん。ご機嫌いかがでしょうか?」
その問いかけに「えぇ、とっても」と軽く答える玉藻前。月夜花はおびえて狐の後ろに隠れてしまう。
狐「貴様・・・何しにきた。」
そう言う狐を笑ってみる玉藻前。次の言葉が放たれた瞬間、玉藻前の気が変わる。周りの雰囲気が張り詰める。
玉藻前「わかってるくせに。ま、能書きはいいわ・・・その月夜花を渡しなさい。」
そう言い放ち、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。その隙を見計らいペコペコを自分の近くに呼び寄せる。
狐「すまない人間よ・・・その子を連れてってはもらえぬか?昔から人間界に憧れるおかしな子でな・・・欲を言えば守って頂きたい。」
顔を向けずにそう一言呟くとブリジットの横を通り過ぎる狐。
ブリジット「・・・死んでもこの子を守りたいのですね。わかりました、引き受けましょう・・・この子は任せて下さい。」
そう狐に言い、走って月夜花をペコペコの上に乗せようとする。
しかし当の本人である月夜花は狐と別れたくないらしく、じたばたと暴れる。
泣き始めて先ほどよりおとなしくなった月夜花を何とかペコペコの上に乗せ、狐を背に最大スピードで走らせる。


走らせたと同じタイミングで後ろからすさまじい風が起きた。後ろを見ると狐が地を真っ赤に染め、倒れている。
・・・やはり。
ブリジット「"力"を手に入れたようだね。如何程の力なのが試したいけど・・・この子を守るように頼まれたしね。」
そう呟くと自分にしがみ付き泣きながら震えている月夜花に向かって笑ってみせる。
月夜花も、泣きながらこちらを上目使いで自分をを見る。
再度後ろを見ると、人間とは思えないようなスピードでこちらに向かってくる玉藻前。
ブリジット「へぇ、あれが"狐の力"を手に入れた奴の力か・・・まず身体能力がもう人間としてはおかしいね。」
そう呟き前を見なおす・・・すると前に人影が二つ。それを確認するなりちっと舌打ちをする。
ブリジット「げっ、前方に待ち構えさせておくたぁご用意のいいこって・・・仕方が無いかなぁ。」
するとペコペコにかけておいた両手剣を持つ。そして「しっかり捕まっておいてねっ」と月夜花に言う。
しかし、よく見ると見慣れた二人である。
ブリジット「・・・ん!?フェイさんと時さんか!」



すぐさま時とフェイの横を通り過ぎる。急ブレーキをかけ、何とか二人の後ろに回るような位置まで戻る。
ブリジット「お二人さん、すみませんが少しお願いしたいことが・・・。」
言いかけていたその時、二人の前に先ほど自分を追ってきた玉藻前が現れる。姿を確認するなり、おぞましい殺気を放つ二人。
玉藻前「へぇ・・・あの時の二人?人間月日が経つと変わるものねぇ・・・」
そう笑いながら二人を見る玉藻前。
ブリジット「挑発にのりなさんなよお二人さん?・・・ごめん、少し時間稼いでもらえるかい?この子を安全な場所に連れて行かなくちゃいけないんだ。」
そう言うも二人は臨戦態勢を取ったまま何も反応を示さない。
ブリジット「・・・死ぬなよ〜?」
そう言い残し、先ほどの方向に向かって走り出す。その姿を目で追う玉藻前。
時「・・・この時を、どれだけ待ち望んだことか。」
そう一言。
フェイ「あなただけを殺すために心眼を開き、修行をした・・・今こそ借りを返させてもらうわ!」
時「あの時の恨み・・・晴らさせて頂く!」


そう言い放つとすさまじいスピードで迫っていくフェイ。時もフェイの後ろに回りこむような感じで走り出す。
次の瞬間、玉藻前の目の前でフェイが姿を消す。姿を探す間もなく前から時のカタールが彼女を襲う。
後ろに下がりカタールを避ける。・・・が、この行動が仇となってしまう。
フェイ「・・・気付いたら死んでいた。これが私達暗殺者の戦い方よ。」
刹那、フェイのカタールが玉藻前の首に突き刺さる。・・・しかし。
玉藻前「確かに強くなったわねぇ・・・でも強くなったのは貴方達だけじゃないのよ?」
声と共に目の前で串刺しにした玉藻前がゆらゆらと消える。動揺を隠せないフェイ。
次の瞬間、時とフェイの横腹に激しい衝撃が走る。思いっきり両手剣を当てられ、吹き飛ばされる時とフェイ。
その姿を確認するなり二人に近づいていく玉藻前。
フェイ「く・・・何故・・・確かに首にささっていたはずなのに・・・。」
そう呟くとフェイは気を失ってしまう。。
玉藻前「最期にいい事教えてあげましょうか?・・・私はここの狐達の力を手に入れたの、もぅ普通の人間じゃないわ。」
そう言うと持っている両手剣を地に投げる。周りを揺らしながら刺さる両手剣。
玉藻前「あとは彼が連れていた月夜花を殺せば九尾の狐も復活できなくなりこの力を持つのは私だけとなる・・・。」
するとフェイの近くに来るなりフェイを片手で持ち上げる。
玉藻前「この娘に人質になってもらおうかしら?・・・彼もさすがに仲間は見捨てはしないはずだし。」
そしてくすっ、と軽く笑う。
時「・・・卑怯な・・・。」
横腹を抑えながら、ふらふらと立ち上がる。そんな時を見下した目で見る玉藻前。
時が急に腕をぶらん、と下げ目をつぶる。次の瞬間、怪我人とはありえないスピードで玉藻前との距離を詰める。
時「ソニックブロウ!!」
それを難なく後ろに下がりかわす。・・・しかし、避けた時にフェイを先程の場所に置いてきてしまった。
玉藻前「ご苦労様・・・しかし馬鹿ね、ただでさえ傷ついている体にさらに無理をさせるなんて。」
彼女がいった通り、フェイを助けれた代償として体からすさまじい悲鳴があがり、血の出が早くなる。苦痛の表情をみせる時。
時「ぐ・・・か・・・かまわん、フェイ殿が無事ならばな・・・。」
そして地面へと倒れこむ時。 玉藻前「どうみれば無事なのかしら?それ以前に・・・あなたも他人の為に命張るなんて馬鹿ねぇ。」
そう呟き二人へと向かう玉藻前。・・・次の瞬間、横からペコペコの足音が聞こえた。
ブリジット「よぉ〜く持ちこたえてくれたぁ二人共〜!」
盛大に場の雰囲気を壊すブリジットであった。



そう言って玉藻前の前に立ちはだかる。しかし玉藻前の余裕そうな表情は相変わらずである。
ブリジットの後ろを見ると、ペコペコがくちばしで器用にフェイと時を背中に乗っけている。
その作業を何とか手伝おうとする月夜花。
玉藻前「・・・どいてくれないかしら?言っとくけど昔の私と一緒にするといくら有名なあなたでも痛い目見るわよ?」
ぺこぺこが離れていくのを確認し、彼女を笑って「きゃー怖い」と茶化す。
ブリジット「えぇ、今日は野暮用であなたの手に入れた力をぜひとも見せて頂こうかと思いましてね。さぁ遠慮はいりません、全力でかかってきてください。」
そう、確認しなければならない。

狐という仮の名前をつけた、貴方の手に入れた力とやらを。

両手剣に手をかけず、こちらの行動を伺う。その姿に殺気を向ける。
玉藻前「そう、あなたはそうやって余裕をみせ真剣に戦おうとしない・・・でも今日はどうかしらね?」
そう言うと、思いっきり手にした両手剣を地面にむけ振り下ろす。
すると、地面をえぐり激しい音をたてすさまじい空圧が自分目掛けて飛んできた。
体を横にそらし避ける。次の瞬間、突如こちらへむかって来た彼女が四人に増え、両手剣を目の前で振り下ろす。
さらに横にとびのき避ける。彼女の次の動作が無い事を確認するなり「ふぅ」とため息をつく。
ブリジット「はぇぇ・・・分身、身体能力の向上、常人では不可能な剣技・・・随分とお強くなりましたなぁ。」
高らかに笑ってみせる。玉藻前からは先ほどよりもさらに強い殺気をこちらに向けている。
玉藻前「あなた・・・一体いつになったら戦う意思を見せるのかしら?いい加減戦ったらどう?」
ブリジット「はは、戦うのは疲れるのであんまし好きでないんですよ。・・・く〜。」
立ち上がり、大きく背伸びをするなりあくびをする。
ブリジット「さて、ひとまず今の所のあなたの力、見させて頂きました。用事も済みました・・・何より楽しめましたよ、玉藻前さん。」
そう言い、手を振って先ほどペコペコが向かった方向に歩き出す。追おうとする玉藻前。
ブリジット「無理はせず引く事も重要ですよ。そのような力も手に入れたのですし死に急ぐ事もないでしょう。」
玉藻前「何をいっているの?私が何故引かなくちゃ・・・!?」
次の瞬間、声がつまる。体全体が微かではあるが震えている。彼はこちらを笑いながら見つめている。
ブリジット「フフ、強くなったのは認めましょう。しかしまだまだです・・・もうちょっとがぬばりましょうね?」


額から汗が垂れる。
ブリジット「あなたはまだ完全にその力を使いこなせていない・・・今のあなたでは剣を抜く気さえ起きませんよ。」
そして玉藻前の方を向く。
ブリジット「今は引きなさい。そして力を蓄えて今度対峙した際私を楽しませて下さい・・・フフ。」
少し経ち、剣を鞘にしまい自分を背に玉藻前が歩き始める。その姿を確認して背を向ける。
玉藻前「・・・あなた、一体何者なの?」
ブリジット「さぁ、何者でしょう?・・・フフ、まぁ新たな力を手に入れたあなたにはいずれわかるかもしれませんがね。」
玉藻前「・・・まぁいいわ、何より今回も私の力不足ね・・・月夜花、一旦あなたに預けておくわ。」
そう言い残し、姿を消す。いなくなった事を確認するなり、遠くに視線を向ける。
ブリジット「殺し合いなんて悲しいではありませんか・・・はは、先程と言ってる事が矛盾してますな。」
そう呟きながら、待ってるよういっといた地点に到着する。・・・が、いない。それ以前に気配がこの階層から感じられない。・・・まさか。
ブリジット「なぬ!?一足早く隠れ小屋に!?・・・さすが我が相棒のペコペコさん、頭が冴えてるなぁ。」
苦笑しながら蝶の羽を使う。もぅお日様が上がるくらいの時間であろう、激しく眠かったブリジットであった。



隠れ小屋に着く。周りを見渡すとペコペコの近くで月夜花がちょこん、と行儀良く座っていた。
自分を見るけたのか、月夜花がちょこちょことこちらに向かって歩いてくる。
目の前につくなり、もじもじしながら上目使いで自分を見る。
月夜花「あ・・・あの。た、助けてくれてありがとうございました。」
そして深くお辞儀をする。それにつられ「いえいえ〜」といいお辞儀をする。
ブリジット「やはりあなたも話す事ができましたか、さすが有名な狐の長さんですね。」
そして笑ってみせる。この月叉花は幼く見えるのだが、並・・・否、上級冒険者では歯が立たないような力を実際持っているのである。
月夜花「あぁ・・・あのあのあのっ。こ・・・ここが人間世界なのですか?」
何やら言葉が詰まりながらも話を続ける月夜花。先ほどからは予想出来ないその姿についつい笑ってしまう。
ブリジット「くくく・・・ま、まぁまずはあの怪我人さんをベットに運ばなくちゃいけないんだ、手伝ってもらえるかな?」
月夜花「は、はいっ!」



ブリジット「ふぅ・・・これで二人の外傷も治したし後は一先ず気付くのを待つだけだなぁ・・・あ、紅茶飲むかい?」
その問いかけに難しい表情を浮かばせる月夜花。
月夜花「・・・なんですか?その"こうちゃ"って?」
ブリジット「はは、そうだよね・・・持ってくるからちょっと待っててね〜。」
すると台所の方へぱたぱたと走る。その待っている間月夜花は周りをきょろきょろと見渡している。
ブリジット「はは・・・そんなに珍しいかい?あ、これ、紅茶だよ〜。どうぞん!」
そして月夜花の前に紅茶が入ったコップを置く。それを緊張した眼差しで見、そして匂いを嗅ぐ。
月夜花「で・・・ではいただきます。」
こくこくこく・・・慎重に飲み干す月夜花を笑いながらみるブリジット。・・・冷たい水で作って正解だな。そして目の前の自分の熱いお茶と睨めっこを始める。
次の瞬間、月夜花が目を潤ませてこちらを見る。
月夜花「うぇぅ〜・・・この水不味いです・・・。」
ブリジット「むむ、君にはあわなかったか。あー・・・ちょっと待っててね?お茶ならのめるはずだ。」
するとまた台所の方へ向かう。・・・少しして先ほどの所で急に音と声が聞こえた。
見直してみると、舌を出し涙目でこちらを確認するなり「えぅ〜〜〜」と呟く。テーブルをみると少し減ったお茶・・・そういう事か。
近くに近づき「大丈夫かい?」と頭にぽん、と手を置く。
ブリジット「にゃはは、君も猫舌ですか・・・。」
目を潤ませたまま痛そうな表情を見せる月夜花。
ブリジット「あ・・・ちょっと待ってね、水で作ったお茶持ってくるからさ。」
そう言い残し台所の方へ戻る。・・・後ろで月叉花がまだ悶えてるような気がするが。
ブリジット「・・・月夜花さん!これも猫舌の試練だ、がぬばれ!」
そう呟き拳をぐっと握る。何やら非常に月夜花と共感が持てた一時であった。



フェイ「・・・ん?ここは・・・私の小屋?」
光がガラスに反射し、その眩しさで目を覚ます。
周りを見渡す。すると隣のベットで寝ている時を見つけ、さらに台所の方がやけにうるさいのに気がついた。
何より何故ここにいるのか理解できなかった・・・戦っていたはずなのに。
フェイ「時さん、・・・時さん、起きて!」
体を揺さぶられ、うっすらと目を開ける時。次の瞬間、体を思いっきり起き上がらせたためフェイと頭が激突する。
無言で額を抑えるフェイと時。フェイを確認するなり、喜びの表情を浮かばせる時。
時「・・・痛い。む、フェイ殿!無事で何より。」
ばしっ!
時の言葉と同タイミングで時の額に向け枕が飛んできた。
フェイ「・・・おはよう、時さん。強烈な目覚ましありがとう、とても痛かったわ。」
そう一言呟き不機嫌そうに台所の方へ向かう。顔を抑え、遅れながらも時が後ろについていく。


急にブリジットの後ろに隠れる月夜花。それとほぼ同じタイミングでフェイと時がこちらを気付き近づいてくる。
するとすぐさま後ろにいる月夜花の姿に気付くフェイと時。しかも時の顔が青ざめている。
時「そ・・・そんな・・・ブリジット殿、そんな少女に手をだしたなんt・・・」
続きを言う前に隣のフェイに頭を思いっきり叩かれどさり、とその地に倒れる。
フェイ「この馬鹿はいきなり何いいだすんだか・・・えっとブリジットさん、後ろの子・・・人じゃないわね?」
頷くブリジット。すると前へでるよう促すが、全然前へでようとしない。
ブリジット「ま、仕方が無いかな。えっと・・・この子は月夜花、諸事情で一緒に行動する事になったんだ。」
フェイ「月夜花ってあそこの長じゃないの・・・まったく、何やってんのよ・・・。」
そう苦笑しながらブリジットを見る。当の本人は問題無し、といった表情である。
ブリジット「まぁそういう事にきまった訳よぉ。あ、時さん起こして〜。君達が気絶していた間の出来事を教えてあげるさ。」
その後時が頭をさすりながら目を覚ます。その姿を確認するブリジット。
ブリジット「うぃ、実はあの後ねぇ・・・」



時「・・・狐の力、か。」
遠くを見て呟く時。フェイは頭をかかえこんでしまう。ちなみに自分は逃げた、という事になっている。
フェイ「てことは・・・私達とは次元が変わってしまった、という事?」
ブリジット「はい・・・悪い事はいいません、無理とは思いますが諦めた方が・・・」
その発言にフェイがこちらを睨む。・・・といっても実際は目が開いていればそんな感じ、といった所か。
フェイ「・・・で?そんなすごい力を持った相手によくあなたは逃げ切れたわねぇ?しかも私達をちゃんと助けて。」
その問いかけにブリジットの動きが一瞬止まり、目を泳がせ始める。疑いの表情を見せるフェイ。
ブリジット「えとえと。・・・あ、そういえば前から聞きたかったんだけどさ、フェイさんがいつも目に巻いてるのって何?」
こちらを疑った感じはそのままで答えるフェイ。後ろで時が何やら慌て始める。
時「フェ、フェイ殿・・・!?」
フェイ「これはスフィンクスダンジョンで拾った青箱からでたものよ。こうみえても中々レア物らしいわよ?」
その言葉に目を輝かせるブリジット。後ろでは時が頭を抑えている。


ブリジット「あ・・・青箱!!あの素敵な素敵な青箱産ですか!」
あまりの嬉しそうな声に少し引きながらも「え、えぇそうよ」と答える。
ブリジット「・・・時さん、フェイさん。青箱が私を呼んでいる!私はすまないがモロクへむかわせていただくよ!!」
そう高らかに宣言すると、早速身支度をし始める。フェイが引きとめようとするも、まったく止まる気配なし。
すると時が嬉しそうにブリジットの後をちょこちょこ付いて行く月夜花に一言だけ声をかけようとする。
時の姿を確認して、しぶしぶと止まるブリジット。止まるのを確認すると月夜花がその後ろに隠れながらちらっ、と覗く。
時「・・・この方、ブリジットという名前なのだが・・・この方はどこでもすぐ眠る。一緒に冒険する時は気をつける事だ。」
隠れながらこくり、と月夜花が頷く。反対に首をかしげるフェイ。
フェイ「・・・?時さんは一緒にいかないの?」
時「今回は、な。どうもまだ体がいう事をきかない・・・。」
そう言うと横腹を抑える時。どうやらまだ戦いの傷が完全に癒えてないようだ。
ブリジット「よーし、準備完了!時さぁん?ちゃんとプロンテアの奴忘れないようにね!イング達との再会なんだから!」
勢いよく出口へと走っていく・・・新たな仲間を連れて。
ブリジット「それでわブリジット、青箱狩りへといってまいりまぁす!」
威勢良く言うと、軽く敬礼をして「じゃね!」という言葉と共に外へ出て行くブリジットと月夜花。
フェイ「・・・すっごく心配。というよりブリジットさんには青箱って言葉、禁句のようね・・・何、何であんなに過敏に反応したの?」
時「気があうな、私も非常に心配だ・・・肝に銘じておいてくれ、青箱は禁句だ・・・夢がいっぱい詰まってるとか熱弁した事があったな。」
何やら言われ放題のブリジットであった。



ブリジット「さて、早速だけど目指すは"砂漠の街モロク"だよ、月夜花さん!」
その言葉に目を輝かせる月夜花。
月夜花「あのあのっ・・・"さばく"って何ですか?"もろく"ってどんな所ですか?」
その問いかけに笑うブリジット。
ブリジット「はは、着けばわかるさ・・・あ、そうそう。」
すると月夜花の目の高さに合わせ姿勢を低くするブリジット。「ほぇ?」と声を漏らす
ブリジット「毎回月夜花というのも何か他人みたいだし・・・ウォルヤファさん・・・ならひとまず"ヤファさん"っていようかな。いいかい?」
ヤファ「は・・・はい!これからよろしくお願いします、ブリジットさん!」
ブリジット「こちらこそ、ヤファさん!よーし、早速モロクへ出発だ!」
そう高らかに声を上げる。ヤファはテンションが高く「おー!」と声を上げた。
目指すは"砂漠の街モロク"。久々にちゃんとした理由なしの気楽な旅である。



ヤファ「ブリジットさん!ペコペコさん忘れてきてますよ!」
ブリジット「あぁ、しまった!・・・って、君の服をフェイさんに頼むの話忘れてたー!」
頭を抱えるブリジット。・・・前途多難とはまさにこういった状況なのだろう。

ヤファ「え?私、何かおかしいですか?」
ブリジット「人間世界でその格好はちょっと・・・。」



つづく




〜あとがき〜
こんちわ!課金も始まり大変な今日この頃、いかがおすごしでしょうか!?
さて第八話、いかがでしたか?・・・すみません、戦闘シーンが未熟すぎますねTT
・・・そうそう、なんと月夜花さんが仲間になるなんてありえない展開でいってみました!
はぃ、作者の趣味です!(核爆
・・・いいじゃん、オリジナルっぽくてw
次回からはフェイ編の時のイングの方へ視界を戻してお話は続きます、こうご期待!
それでは〜♪
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